2017.04.18 08:20

【トルコ国民投票】独裁で安定は得られない

 民意とはいえ、民主国家への歩みを損なう結果を招きはしないか。トルコで大統領権限を大幅に拡大する憲法改正の国民投票が行われ、賛成が過半数となった。
 議院内閣制のトルコでは大統領は儀礼的地位に位置付けられてきた。改憲によって首相職は廃止になり、大統領が実権を握る大統領制に移ることになる。
 閣僚の任免権や非常事態宣言の発令権、憲法裁判所判事の人事権も手にする。現大統領エルドアン氏の「独裁化」を懸念する声が出るのも当然だ。
 エルドアン氏はイスラム主義勢力をけん引し、強権的な政治家として知られている。大統領制は長年の悲願だったという。
 移行は2019年の大統領選後だが、2期10年の任期に移行前の在任は含まれない。エルドアン氏の長期政権が可能になる。
 トルコは国民のほとんどがイスラム教徒ながら、政教分離の世俗主義を国是に建国以来、近代化を進めてきた。歴史的にはロシアと対立し、北大西洋条約機構(NATO)の一員でもある。欧州との親和性は高いと言っていい。
 だが、難民問題や過激派組織「イスラム国」(IS)によるテロは、欧州で保護主義や大衆迎合政治が台頭しているのと同様に、国民が強い指導者を求める結果になった。
 それでもエルドアン氏の政治姿勢は危ういと言わざるを得ない。
 首相在任中に大統領の直接選挙制を導入し、自らが就任。政権に影響力を及ぼし続けている。特に2016年のクーデター未遂後は批判的な軍人や公務員を多数罷免し、メディアへの弾圧を強めている。
 国民は理不尽な独裁統治までは望んでいないはずだ。国民投票でも賛否が僅差だった。
 エルドアン氏はこうした民意を真摯(しんし)にくみ取るべきだ。まして、粛清や弾圧の対象にすることがあってはならない。
 欧州はエルドアン独裁体制に警戒を強めている。双方は軍事面だけでなく、経済や文化的な結び付きも強い。独裁化を推し進めれば、それらの関係も悪化しかねない。
 近年、欧州のエルドアン氏への見方は厳しい。少数民族問題や表現の自由などの侵害、イスラム主義の強まり。NATOメンバーであり、IS掃討では連携関係にありながら、欧州連合(EU)加盟は認めてこなかった。
 国民投票を巡っても、欧州のトルコ人の支持を得るためにオランダ入りしようとしたトルコの外相について、オランダ政府は入国を認めなかった。こうした圧力を考えると独裁体制を敷いても国の安定が得られるとは思えない。
 もちろん、トルコの政治が不安定化すれば、難民問題やテロ対策、ロシア政策など欧州も影響が大きいはずだ。双方の連携は不可欠だ。共に自制しつつ、対話を絶やさないことが肝要になる。
カテゴリー: 社説


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