2017.04.04 08:10

【安保法1年】このまま進んでよいのか

 集団的自衛権を行使できるようにした安全保障関連法の施行から1年が過ぎた。
 法の中身はいまもって国民の理解が得られたとは言い難い。日本が戦争に巻き込まれる危険も、安倍政権の「積極的平和主義」という言葉でオブラートに包まれたままだ。
 一方で、自衛隊の海外任務は確実に拡大しつつある。
 陸上自衛隊の南スーダン国連平和維持活動(PKO)には昨年11月、「駆け付け警護」の新任務が加わった。国連職員らが武装勢力に襲われた場合、武器を手に助けに行く。
 5月末をめどに部隊の撤収が決まったが、これまでインフラ整備を担ってきた自衛隊のPKOに、銃撃戦も想定される任務を課す先例をつくった影響は大きい。
 政府は今国会に、自衛隊と他国軍が物資などを融通し合うために結んでいる物品役務相互提供協定の改定案も提出している。米軍などへの後方支援を拡充するためだ。
 後方支援は従来、憲法9条が禁じる武力行使と一体化することを避けるため、活動場所は「非戦闘地域」に限定していた。
 安保法により、現に戦闘が行われていなければ危険な場所でも活動できるようになった。日本が直接攻撃を受ける事態などに限定されていた弾薬も提供可能になる。後方支援といいながら米軍などの武力行使と一体化する恐れが強い。
 国会で改定案が承認されればその枠組みが完成することになる。慎重な議論が求められよう。
 昨年秋以降、自衛隊は「重要影響事態」を前提にした日米共同訓練を実施し、平時から米軍艦艇などを守る「武器等防護」の運用も始めた。今後は「在立危機事態」を想定し、集団的自衛権を行使する共同訓練にも入る計画だ。
 このまま突き進んでよいのか。安保法は、国民や自衛隊のリスクについて論議が深まらないまま強行採決され、成立した。違憲性についても決着していない。
 政府はせめて、成立後も丁寧に説明を尽くし、慎重な運用に徹するべきであろう。ところが、現実は逆に制度化を急ぐかのようだ。
 南スーダンPKOが新任務を付与しながら突然撤収を発表したことも国民が納得できる説明がなされていない。政府は「治安悪化が撤収の理由ではない」と強調しているが、現地の治安は昨年来、予断を許さない状況にある。
 保管を巡って騒動となった部隊の日報にも、現地の情勢を「戦闘」と表現していた。隊員に死傷者が出れば政権への打撃になるために撤退させる、との見方さえ出ている。
 日報問題は政府の危機管理や文民統制が懸念される事態だ。情報公開への消極姿勢も象徴していよう。安保法を運用する資格が問われる。
 菅官房長官は、施行1年に当たり「法運用に万全を期す中で国民の安全を守っていく」と述べたが、言葉通りに受け取るわけにはいかない。

カテゴリー: 社説


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