2017.04.02 08:10

【福島の避難解除】希望につなげるためには

 東京電力福島第1原発事故に伴って周辺自治体に出されていた避難指示が、年度替わりをもって広い範囲で解除された。
 新たに対象になったのは福島県浪江町、川俣町、飯舘村、富岡町の4町村の「居住制限区域」「避難指示解除準備区域」で、計約3万2千人の住民に帰還の道が開けた。
 川俣町は全ての避難指示が解消されるなど、被災地の避難区域は当初の約3分の1にまで縮小した。事故から6年、被災地は復興へ大きな節目を迎えたといえそうだ。
 だが、三つの避難区域のうち、放射線量が高い「帰還困難区域」は依然7市町村で継続されたままとなっている。第1原発が立地する双葉町と大熊町では、制限区域や準備区域も解除が見送られた。
 解除された地域とて、手放しでは喜べない状況だ。
 解除に先立ち、4町村で自宅に長期滞在できる準備宿泊に登録していた帰還意思の高い住民は、対象人口の5%余りだった。帰還は遅々としたものになりそうだ。
 子どもや子育て世代にとって6年という期間は長い。県内外の避難先で就職したり、新居を構えたりした人は多い。昨年までに避難指示が解除された楢葉町や南相馬市など5市町村も、帰還率は平均で13%台にとどまっている。
 避難指示が解除されなければ住民の帰還はあり得ない。だが、解除されたからといって地域ににぎわいが戻るわけではない。原発事故の罪深さを改めて示している。
 急がれるのは医療や教育、買い物といった生活インフラの再構築だ。富岡町では帰還を促すため町が複合商業施設を整備した。民間の力はまだ限られており、生活基盤を整えるには行政の役目が大きい。
 帰還を阻む大きな要因はやはり、放射能への不安であろう。
 宅地や農地などの表土を削る国の除染作業は進んだが、山林の中にはいまだ手付かずの場所がある。
 作業で生じた除染廃棄物も、袋に入れられて農地の周辺などに山積みになっている。基幹産業である農業を再開するためにも中間貯蔵施設の建設を急ぎたい。
 何より見通しを暗くしているのは第1原発である。いまだ廃炉の道筋は見えず、汚染源が残されたままとなっている。さらなる放射能汚染の危険も否定できない状況だ。
 一方で、避難解除になれば住民は自立を求められる。東電から住民に毎月支払われる慰謝料も1年後に打ち切られる見込みだ。
 政府は「帰還困難区域」についても5年後の解除を目指している。一刻も早く事故処理を終えようとしているのであろうが、解除ありきの姿勢になってはいないか。被災地から反発の声も出ている。
 事故は現在進行形であり、被災地は多くの課題を抱えたままだ。解除を住民の希望につなげていくためには、引き続き政府や東電が復興を後押しする責任がある。
カテゴリー: 社説


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