2017.03.22 08:10

【「共謀罪」法案】 国民の不安を拭えるのか

 政府は、共謀罪の構成要件を変えた組織犯罪処罰法改正案を閣議決定した。今国会での成立を目指す。
 共謀罪を新設するための法案は2003年から05年にかけ、3度国会に提出された。いずれも国民の強い反発で廃案になっている。
 今回の改正案は「組織的犯罪集団」に適用すると規定し、対象となる犯罪も絞った。とはいえ、根強い懸念を解消できるのか。国会審議を通じ、問題点を浮き彫りにしなければならない。
 共謀罪は重大犯罪の実行行為がなくても、謀議に加わるだけで処罰できるようにするものだ。
 ごく一部の例外を除き、実行された犯罪を裁く刑事法制の原則を大きく転換することになる。それだけに捜査当局の恣意(しい)的な判断で、市民活動や思想・信条の自由を脅かされないか、不安がつきまとう。
 政府は20年の東京五輪・パラリンピックに向けたテロ対策の強化をうたい、罪名を「テロ等準備罪」と呼んで構成要件を見直した。テロを未然に防ぐ必要性は言うまでもないにせよ、根本的な危うさは残ったままといわざるを得ない。
 改正案ではこれまでの批判を踏まえ、当初は676としていた対象犯罪を277に絞ったが、それでも捜査機関による乱用の恐れは拭えない。
 政府は適用対象を「組織的犯罪集団」と位置付けるが、一方では「正当な活動をする団体も目的が一変すれば組織的犯罪集団となる」と説明している。
 「一変」したかどうかの基準も「具体的な事情を考慮して総合的に判断する」(金田法相)という曖昧さだ。捜査機関側がいかようにも判断しかねない。
 構成要件とする犯罪の準備行為にしても、同様の懸念が浮かぶ。現場の下見や資金調達などを挙げるが、犯罪の準備とどう認定するのか。拡大解釈の余地があれば、乱用の歯止めになるまい。市民による集会やデモへの抑圧につながらないか。
 政府はテロ対策を前面に押し出すものの、当初の改正案には「テロ」の表記さえなかった。
 そもそも、政府が「共謀罪」を設ける根拠とする国際組織犯罪防止条約にしてもテロ対策がメインではなく、マフィアによる薬物犯罪や資金洗浄などを想定したものだ。
 既に締結した国でも、既存の国内法で対応したケースが多い。日本もテロに関連する犯罪について現行法の予備罪や準備罪で対応できるとの指摘がある。
 直近の世論調査では改正案に反対の声が45・5%と、賛成の33・0%を上回っている。政府の前のめり姿勢とは裏腹に、国民が抱える懸念を表しているといってよい。
 現行法や個別の犯罪に関する予備罪などの検討で、なぜ対応できないのか。
 国民の人権に大きく関わる問題だけに、数の力で押し切ることは許されまい。国民が納得できるだけの説明を求める。

カテゴリー: 社説


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