2017.03.20 08:20

【オランダ下院選】気を抜けぬ極右との戦い

 欧州で台頭する極右勢力がどこまで勢いを増すのかが注目されたオランダ下院選は、反イスラム、反欧州連合(EU)を訴える極右・自由党が伸び悩み、議席を伸ばしたものの第1党の座には届かなかった。
 ルッテ首相率いる中道右派・自由民主党は首位を守り、ひとまず安堵(あんど)が広がった。ただ議席を大幅に減らし、完全勝利とはいえない。
 今回の下院選は、英国のEU離脱決定やトランプ米大統領の誕生など、排外主義やポピュリズム(大衆迎合主義)の台頭に世界が揺らぐ中、欧州大陸にもその波が上陸するかを占う試金石だった。
 欧州はことし、フランス大統領選やドイツ連邦議会選挙が控える選挙イヤーだ。オランダの微妙な選挙結果は極右との戦いが決して気の抜けないものであることを示した。
 極右の自由党は、「オランダのトランプ」と呼ばれたウィルダース党首が、モスク(礼拝所)の閉鎖やイスラム諸国からの移民受け入れ停止などを掲げ、社会の分断をあおり台頭してきた。選挙前は、第1党に躍り出るとの見方もあったが、終盤に失速した。
 原因としては、ウィルダース氏が連帯感を示したトランプ氏による米国政治の混乱で失望感が広がったことや、既存の政治への批判票が左右に割れたことが考えられる。
 一方、与党の自由民主党は連立を組む労働党が大敗したこともあり、多党分裂の状況の中で政権づくりが難航しそうだ。既成政党への支持がポピュリズムを防いだとは、言い切れない。
 オランダはユーロ圏5位の経済規模があり、昨年の経済成長率は2・1%、ことし1月の失業率も5・3%と、圏内主要国の「優等生」と見なされている。それでも極右を第2党に押し上げたのが、既存の政治にノーを突き付ける民意の根強さにあることを忘れてはなるまい。
 グローバル化による格差の拡大や、緊縮財政による国民の不満や政治不信が背景にあろう。それらの根本原因に正面から取り組まなければ、ポピュリズム台頭の芽は残り続ける。
 選挙戦でルッテ首相は、極右に票が流れることを阻止しようと移民に厳しい姿勢を強め、反移民的な人々の票も取り込んだ。与党が右寄りに傾くことに対する懸念も指摘されている。
 極右が第1党に届かず、与党が議席を減らした選挙結果は、まさに「勝者不在」といえる。とはいえ、フランスの大統領選に向け「反EUのドミノ現象」を提唱してきた極右、国民戦線のルペン党首の戦略に、初戦で打撃を与えた意義も少なくない。
 ドイツのメルケル首相も、取りあえずほっとしていることだろう。しかしオランダで極右が失速したからといって、欧州を覆う不穏な空気が拭い去られたわけではない。各国の指導者は警戒を怠らず、自由な欧州を守る戦いを続けるべきだ。
カテゴリー: 社説


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