2017.03.19 08:10

【退位の国会見解】国民の総意へ議論深めよ

 天皇陛下の退位を巡り衆参両院の正副議長が、陛下一代限りの特例法制定を柱とする国会見解をまとめ、安倍首相に伝達した。
 特例法は政府の有識者会議がまとめた論点整理でも有力視されていた案で、政府与党が支持していた。
 一方、憲法は皇位継承を「皇室典範の定めによる」としており、典範によらない特例法での退位は違憲との見方がある。このため民進、共産など野党の多くは典範を改正し、全ての天皇を対象とする恒久制度化を求めていた。
 国会の見解は、典範の付則に「特例法は典範と一体をなす」旨の規定を入れる。特例法制定を典範改正と同義とし、憲法上の疑義を打ち消す狙いがある。
 陛下の退位が例外的措置になるとともに、典範付則の規定で将来の先例ともなり得る、とする。まさに与野党の「折衷案」と言えよう。
 これにより政府が国会に提出する特例法案の骨格が固まった。ただし、これまでは法形式の議論が中心だった感が否めない。
 「法形式の議論はまんじゅうで言えば『皮』の話だ。問題は法の中身となる『あんこ』だ」(民進党の野田幹事長)。
 「あんこ」とはつまり、将来にわたっていかに皇位を安定的に継承していくか。恣意(しい)的な退位や強制的な退位を招かないよう、制度設計をどう行っていくのか。それらがしっかりと担保された法律を整備することに尽きるだろう。
 皇位継承の安定化に関して、国会の見解は「女性宮家」創設などに触れている。特例法の施行後、政府が速やかに検討することが「各党派の共通認識」と明記した。ただし結論を出す時期について、与党は「明示は困難」とし、民進党は「1年をめど」とするなど隔たりがある。
 女性宮家の創設はこれまでも論点に浮上したものの、「たなざらし」となった経緯がある。今度こそ結論を得るべく、論議を深めなければならない。
 恣意的、強制的な退位について国会見解は、国会が特例法を制定する都度、国民の受け止め方も踏まえて判断することで回避できるとする。しかし具体的にどんな手続きが想定されるのか。一例として「皇室会議の議決」も上がっているが、その是非も含めて国民に分かりやすく説明する必要がある。
 天皇の地位を巡る与野党の論議が「密室」で行われたことも残念だ。両院議長らによる意見聴取は非公開で行われ、議事録も当面は公開されないという。
 政府は5月にも特例法案を国会に提出する段取りだ。その際、既に与野党の意見調整が行われたのを理由に、国会審議が形骸化するようなことがあってはならない。
 国権の最高機関としての国会で、与野党が活発な議論を戦わせる。それなしに、象徴天皇制の根幹である「国民の総意」を形作ることなどできはしない。

カテゴリー: 社説


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