2017.03.18 14:30

小中学校の壁なくす 高知の義務教育学校・土佐山学舎と行川学園

1年生から9年生までが参加した学習発表会。校舎は一つで、学年を超えて名前を覚え合う関係ができている(高知市の土佐山学舎)
1年生から9年生までが参加した学習発表会。校舎は一つで、学年を超えて名前を覚え合う関係ができている(高知市の土佐山学舎)
英語授業3年から 活発な教員連携
 2016年度にスタートした「義務教育学校」。小学校、中学校という従来の学校の枠をなくし、9年間をひとくくりにして教育する新しいスタイルの学校だ。高知県内では高知市に2校が誕生。教室の風景はどう変わっていくのか―。

 日本の義務教育は小学校6年、中学校3年の「6・3制」が定着している。ただ、学級担任制と教科担任制の違いなどもあり、中学校進学を機に勉強につまずいたり不登校になったりという課題が指摘されてきた。いわゆる「中1ギャップ」と呼ばれる問題だ。

 この課題に対応しようと、各市町村教育委員会が独自に小中一貫教育に取り組んできた経緯がある。高知県教育委員会によると2016年度は高知県内で10件(20小中学校)ある。

 小中一貫教育をさらに推進した形が義務教育学校で、学校教育法の改正で誕生した。小中一貫校は制度上カリキュラムも校長も小中で別々だが、義務教育学校はそれらを統一し、一つの学校として運営される。2016年度は13都道府県で22校が開校、高知県内には高知市の土佐山学舎(高知市土佐山桑尾)と行川学園(高知市行川)の2校がある。

 行川学園は1986年度に小中一体型の校舎を整備したことをきっかけに、掃除や行事を一緒に行うなど小中一貫を意識した教育を行ってきた。小松浩校長は「長年やってきた取り組みに国の制度が追い付いてきた」と話す。

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 「レッツ ゴー トゥー 土佐山探検ツアー」。子どもたちの元気な声が響く。土佐山学舎の3年生11人が、インドネシアから高知大学に来ていた留学生に地域を案内する企画で、子どもたちは英語を一生懸命使いコミュニケーションを取っていた。

 上田結生さん(9)と池ほのみさん(9)は「(相手の)英語は半分くらい分かった。楽しかった!」。竹崎優子校長は「物おじせず伝えていた。子どもたちには使える英語を身に付けてほしい」と目を細めた。

 英語教育は土佐山学舎の中心的取り組みの一つ。外国語活動は学習指導要領で「小学校5、6年生が週1回行う」と定められている中、土佐山学舎は3年生から「総合的な学習の時間」の授業時間の半分を、外国語活動に充てている。

 普通の小中学校なら教育課程の変更をするときは文部科学省に特例として申請する必要があるが、義務教育学校では不要。中学校で学習する内容を前倒しして小学校で学んだり、中学校で小学校の内容を学び直したり、子どもの状況に応じたカリキュラムを組むことができる。

 土佐山学舎は地域を学ぶ「土佐山学」にも力を入れている。竹崎校長は「カリキュラムを柔軟に編成できるので、学校の特色を出しやすい」とメリットを強調する。

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 授業風景も少し違っている。土佐山学舎の「7年生」の教室をのぞいてみよう。

 7年生は一般的な学校では中学1年生に相当する。義務教育学校は9年制のため、学年の呼称も1~9年生になるわけだ。

 数学の授業は複数の教員が関わっていた。補助教員が授業に入る光景は小中学校でも見られるが、この日授業に入っていた教員の1人は、このクラスの生徒が6年生だった時の担任だという。

 元担任の大石美樹教諭は「ヒントを言うだけで解決できる子もいれば、最後まで一緒に考えてあげたい子もいる。学習も性格面も小学生のころから知っているからこそ対応できることがあるんです」と言う。生徒にも好評だ。梅原正弘さん(13)は「習うちゅう先生やき分からんところが聞きやすくていい」と笑顔を見せた。

 “中学校”の教員が5、6年生の授業を担当するなど、小中の枠を超えて学習指導に当たる。一貫教育の利点を実感することは他にも多いと土佐山学舎の教員は言う。例えば職員会で1~9年生全ての子どもの情報を、全教員が共有するようにしている。教育界で指摘されることの多い「小中学校の文化の壁」が徐々に低くなっている、そんな印象を受けた。

 一方、小学校の卒業式がないため学校生活にメリハリが付きにくい、複数の小中学校を統合する際の“大義”に使われるといった、心配な点も数多く列挙できそうだ。

 メリットもデメリットも含めて併せ持ちながら、義務教育学校は歩きだしたばかり。山の学校の挑戦に注目したい。

カテゴリー: 教育


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