2017.03.17 08:10

【稲田防衛相】組織を統率できていない

 明らかになったのは自衛隊の隠蔽(いんぺい)体質だけではあるまい。政府が自衛隊を統率できていないという由々しき事態だ。
 南スーダン国連平和維持活動(PKO)派遣部隊の日報を巡り、新たな事実が判明した。
 防衛省は2016年、日報の情報公開請求に対し、陸上自衛隊が既に廃棄したとして不開示を決定していた。2017年2月、自民党衆院議員が文書の存在を明らかにすると一転、統合幕僚監部で電子データが見つかったと認め、一部を公表していた。
 稲田防衛相は国会などで「請求を受けた段階で陸自に日報がなかったのは事実。隠す意図はなかった」と強調していた。
 ところが今回、陸自は少なくとも1月ごろまでデータを保管していたことが判明。つじつま合わせに逆に廃棄させた可能性も出ている。
 稲田氏自身は隠蔽への関与を強く否定しているが、防衛省が国民をだまし続けてきたのは事実だ。
 南スーダンでは、首都ジュバで2016年夏、270人以上が死亡する戦闘が起きるなど緊張が続いている。
 2月に公表された日報はまさに2016年夏のもので、「宿営地周辺での流れ弾や、市内での突発的な戦闘への巻き込まれに注意が必要」と緊迫した状況が記されている。
 当時、日本では、部隊に安全保障関連法に基づく新任務「駆け付け警護」を付与するかどうか議論が続いていた。新任務は戦闘に巻き込まれる恐れが高く、現場の情勢を見極める上でも、現場報告の日報は極めて重要な情報である。
 それが所在不明だったり、短期で廃棄されたりすることは本来、ありえない話であった。しかも、日報のデータが稲田氏に示されたのは発見から約1カ月後だったという。
 事実であるのなら、シビリアンコントロール(文民統制)ができていないと言わざるを得ない。 
 稲田氏の力量を疑問視する声は、与党内からも出ている。
 公表された日報を巡っては、戦闘が生じているのであればPKO参加5原則や憲法9条に抵触するため、国会でも激しい論戦となった。
 ところが、稲田氏は「武力衝突はあったが、法的な意味での戦闘行為ではない」「9条の問題になるので武力衝突という言葉を使っている」と繰り返した。
 森友学園問題では弁護士としての関わりを強く否定していたが、民事訴訟の代理人として出廷していたことが判明。「記憶に基づいた答弁で、虚偽との認識はない」と強弁した。教育勅語の精神を是認する発言も適性が疑われる。
 野党は辞任要求を強めている。稲田氏は日報問題で特別防衛監察を実施し、「隠蔽体質があれば私の責任で改善したい」と辞任を否定したが、組織を統率できていない大臣の言葉に説得力はない。
 新たな大臣の下で、徹底的に調査し、自衛隊の体質改善も進めるべきであろう。
カテゴリー: 社説


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