2017.02.17 08:00

【米の中東政策】転換は和平を遠のかせる

 トランプ米大統領がイスラエルのネタニヤフ首相と初めて会談し、中東和平交渉でパレスチナ国家樹立による「2国家共存」にこだわらない考えを示した。
 2国家共存が和平実現に向けた唯一の道だとしてきた歴代米政権の方針の転換といってよい。パレスチナ側の反発は必至で、和平交渉の再開がさらに遠のきかねない。
 パレスチナ国家を樹立し、イスラエルと共生していく2国家共存は2003年の和平案(ロードマップ)の柱だ。米とロシア、欧州連合(EU)、国連の4者が策定した和平案を、米、イスラエル、パレスチナ自治政府が履行開始で合意した経緯がある。
 当時のブッシュ大統領は歴代の中でも最もイスラエル寄りと評されたが、交渉の仲介役として和平実現に取り組んだ。続くオバマ大統領もイスラエル寄りの姿勢を「二重基準」と批判されながらも、努力してきたといってよい。
 ただし、和平交渉は再開しては頓挫することの繰り返しだ。イスラエル、パレスチナとも政権内部に和平に反対する勢力を抱えているところに難しさがある。14年に暗礁に乗り上げた交渉は再開の見通しが全く立っていない。
 首脳会談後の記者会見で、トランプ氏は「双方が望むなら、2国家共存でも1国家でも、どちらでも構わない」と述べた。国際社会がやっとのことで合意し、歴代政権も堅持してきた方針を転換する姿勢は明らかだろう。
 パレスチナにとって独立国家の樹立は悲願だ。その道を閉ざしかねない米の方針転換に激しく反発するのは間違いない。自治政府内で対イスラエル強硬派のイスラム原理主義組織ハマスが勢いづけば、アッバス議長が窮地に陥る可能性もある。
 加えて、トランプ氏が意欲を見せている在イスラエル米大使館の移転も大きな問題となる。国際的には「首都」と承認されていないエルサレムへの移転に踏み切れば、パレスチナはむろん、中東各国の非難を招くのは避けられない。
 イスラエルに影響力を持つ米の関与なしには、パレスチナ問題の解決は極めて難しい。トランプ政権が親イスラエルの姿勢を強めれば、和平交渉の再開はおろか、中東の不安定化にもつながりかねない。
 そのツケは自らに跳ね返ってくる可能性もあるのではないか。大国としての責任を果たすよう、強く求めたい。
 米の方針転換は日本の中東政策にも影響を及ぼす。日本は和平支援のため、ヨルダン川西岸での農業や産業の開発構想「平和と繁栄の回廊」を主導している。対立が深まれば、取り組みに不可欠な会合を開けなくなる恐れがある。
 菅官房長官は2国家共存路線を支持する考えを示している。そうであるなら、トランプ政権の出方を注視するだけでなく、積極的に意見していくことが欠かせないはずだ。
カテゴリー: 社説


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