2017.02.14 08:00

【米軍の研究助成】軍学共同が加速している

 米軍が日本の大学などの研究者に対し、過去10年間で少なくとも8・8億円の研究費を提供していたことが分かった。
 2015年末段階で、00年以降で2億円を超える助成が行われたことが判明していたが、より大きな規模で行われてきたとみるべきだろう。国立大にも多額が流れており、大阪大のレーザー技術には2億円以上が提供されていた。
 日本の学術界は太平洋戦争に加担した反省に立ち、戦後は軍事研究に距離を置いてきた。科学者でつくる日本学術会議も1950年と67年の2度、戦争目的の研究はしないとする声明を発表している。
 ところが、研究現場では米軍による助成がじわじわと浸透していた可能性がある。学術界は実態の把握を急ぐべきではないか。
 米軍はなにも奉仕精神で日本の研究に予算を投じているわけではあるまい。成果がいつの間にか軍用技術に応用されたり、軍事資金活用への抵抗感が薄れて軍事研究に協力的になったりしかねない。
 懸念されるのは、資金提供は米軍だけではないことだ。
 日本の防衛省も2015年度、軍事に応用できる基礎研究に委託費を出す公募制度を導入した。当初は3億円の予算だったが、16年度に倍増され、17年度は110億円への大幅増額が予定されている。
 大学や研究者はいま、研究費の不足に悩んでいる。
 国から国立大学への運営費交付金はこの10年で1割近く減った。大学間で競わせて傾斜配分する制度を拡大させており、全体の予算額が減る中で獲得競争が激化しているのが実情だ。
 そこへ日米の防衛・軍事当局が資金をちらつかせる。背に腹は代えられぬと判断する研究者が増えてもおかしくはない。
 こうした状況に、かつて声明で軍事研究を強く拒否した日本学術会議も、昨年から声明の見直しについて協議している。4月の総会で結論を出す方針という。見直しには反対意見も多いが、軍事研究に対する研究者の価値観が揺らいでいることを物語っている。
 大学研究が軍事と一体化する「軍学共同」の加速が疑われる事態だ。将来、米軍や政府が研究に介入したり、研究者の想定外の応用をしたりすることにつながりかねない。
 日本では軍事と距離を置きながら多くのノーベル賞受賞者を輩出するなど高いレベルの研究が行われてきた。世界に誇るべき実績だ。
 その現場を軍事研究の場にしてはなるまい。政府は文教予算として十分な研究費を確保し、学術界も毅然(きぜん)とした態度を貫いてほしい。
 一方で、大学などは所属する研究者の資金源などを十分把握できていない面がある。軍学共同への不安が高まる中、資金や研究成果などの透明性を高める必要があろう。情報公開の充実やチェック体制の仕組みづくりも議論が急がれる。
カテゴリー: 社説

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