2017.02.09 07:50

【法相の文書】共謀罪への不安が膨らむ

 「テロ等準備罪」の国会審議を巡り、法務省が異例の見解を公表し、与野党から批判の声が上がる事態となっている。
 現在法案を検討中であることなどを理由に「法案提出後に、所管の法務委員会でしっかりと議論を重ねていくべきだ」と文書にして報道機関に配布した。金田法相の指示で作成し、法相も手を入れたという。
 国会からの批判は当然だ。行政府が立法府の議論の進め方に注文を付けたに等しい。「質問封じ」と取られても仕方あるまい。
 言うまでもなく、国会は法案の有無にかかわらず政府の姿勢や国政の課題を幅広く論議する場だ。憲法で国政調査権も認められている。
 ましてテロ等準備罪は、政府が「共謀罪」の構成要件を厳格化して創設を目指しているもので、今通常国会の焦点の一つである。国民の関心も高い。
 だからこそ、代表質問や衆院予算委員会でも取り上げられてきた。法相がこの期に及んで国会を軽視するかのような対応を取ったことは閣僚としても、国会議員としても見識が問われる。
 共謀罪は重大犯罪を実行しなくても、謀議に加わるだけで処罰できるようにするものだ。捜査機関による乱用の懸念は強く、法案は過去3回廃案になってきた。
 ところが安倍政権は名称をテロ等準備罪に変え、組織犯罪処罰法改正案を提出する構えだ。2020年東京五輪・パラリンピックをテロの脅威から守るために法整備が必要と主張している。
 これまでの批判も考慮し、676に上る対象犯罪を200~300程度に絞るという。首相は「犯罪の合意があっても実行準備行為がなければ逮捕できない」との見解も示している。
 だが、依然、乱用の恐れは消えていない。既存の法で対応できるとの意見もある。野党は「対象犯罪の選別は国際組織犯罪防止条約上できない」とした過去の政府答弁書との整合性も追及している。
 極めて重要な論議にもかかわらず金田法相は国会答弁に窮し、誠実に答えない場面が目立っていた。加えて今回の文書である。法相がこれでは、法改正の中身や運用にも不安が膨らむ。
 本人は謝罪と撤回をしたが、与党からも厳しい意見が出ている。野党は辞任を要求している。安倍首相の任命責任も問われよう。
 安倍政権では昨年10月、環太平洋連携協定(TPP)承認案を巡り、山本農相が強行採決の可能性に言及する発言をし、国会が紛糾したばかりだ。閣僚によるこうした言動からは「自民1強」「安倍1強」と呼ばれる政治状況下でのおごりを感じざるを得ない。
 特定秘密保護法や安保関連法、いわゆる「カジノ法」などの審議で、国民の不安を十分解消しないまま数の力で押し切る動きが続いている。誠実な対応は政権、与党全体に求められている。
カテゴリー: 社説


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