2017.01.12 08:20

高知県馬路村の山中にカモシカの子 国の特別天然記念物

雨の中、餌を求めて歩くカモシカの「アイ」(馬路村)
雨の中、餌を求めて歩くカモシカの「アイ」(馬路村)

 1月初旬、高知県安芸郡馬路村の山中。落石交じりの山道を進む車の前に、黒っぽい影が飛び出した。国の特別天然記念物、ニホンカモシカの子どもだ。距離は10メートルもない。ガラス越しに視線が合った瞳は、吸い込まれそうなほど深く澄んでいた。

 四国では高知県と徳島県で見られるカモシカ。両県が2010、11年度に調査し生息数を約1600頭と推定したが「放置人工林」やニホンジカの増加などで、餌となる植物は減っている。2015年には環境省が「絶滅の恐れのある地域個体群」に指定、現在は千頭前後になっている可能性も指摘される。

 同行した野生動物写真家の中西安男さん(60)が「『アイ』です。元気やったかー」と声を上げた。体長約50センチのメスはしばらくこちらを“観察”した後、道路から谷へ。崖のような斜面を物ともせず、ヒョイヒョイと下っていく。

 この地域を定期的に訪れる中西さんによると「アイ」は2016年春生まれらしいが、母親はいない。生後間もなく、何らかの理由で生き別れた可能性が高いという。授乳が十分でなかったのか、同世代の個体と比べて体は一回り小さい。餌場も自分で見つけなければならない。冬枯れの山中を、わずかに残った植物や落ち葉を求めて歩く。

 奥山の春は遅い。餌となる植物が芽吹く4月までなんとか生き延びてほしい。そう願いながら山を後にした。

カテゴリー: 環境・科学安芸


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