2016.11.27 08:05

高知市で追手前高校の時計台 魂、映画の聖地、観光スポット

 時を刻んで85年。高知城や日曜市のそばに立つ高知追手前高校の時計台は、長年県民に親しまれ、高知市のシンボル的存在である。この時計台、生徒にとっては“魂”の象徴であり、映画ファンには“聖地巡礼”の地。そして“観光スポット”的存在でもある。

 この時計台は、高知追手前高校の前身である高知中(その後、尋常中―高知一中―城東中―そして追手前高校)が1886年、高知師範学校とともに現在の追手筋2丁目に校舎を移転新築する際、校舎の中央に設置したのが始まり。

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市民らに親しまれるシンボルは、明かりがともった夜の街にも映える(高知城から時計台周辺を望む)
市民らに親しまれるシンボルは、明かりがともった夜の街にも映える(高知城から時計台周辺を望む)
 現在の時計台は1931年、現校舎が建てられた時にできた2代目だが、当初の設計には無かったという。そこには建築費の問題があった。ちょうど安芸中(現安芸高校)の改築と重なり、県財政への負担が大きいことから、「市街地への移転」「校舎は鉄筋ではなく木造にすべき」「時計台不要論」などが出て、すんなり運ばなかった。最終的に追手前高校(尋常中)卒業生で建築界の権威、武田五一京大教授が設計図を調査分析し、現行のスタイルに決まったそうだ。

 「時計台不要論」については卒業生や教職員から「時計台は本校生の魂としての象徴である」「理想に向かう生命であり、永遠を示す灯である」といった強い働き掛けがあり、最初の計画を変更し新校舎にも時計台が継承された。

 今の生徒は時計台についてどう思っているのだろう。卒業生でもある池康晴校長(60)に聞くと、

 「卒業生の答辞はもとより、生徒の文章に『時計台の下で』という言葉がよく出てきます。自分を確立する大事な時期を過ごした場所のシンボルと考えてると思いますよ」と話してくれた。

 現校舎を建設した際、初代の時計台は「高知一中校友会館」として校内に移転した。同じ敷地で二つの時計台が時を刻んでいる時代があった。しかし1945年7月の高知大空襲で初代は焼失。2代目も戦災により破損した。その後、修理して駆動もぜんまい式から電池時計、電気時計へと変化。文字盤もローマ字から現在のアラビア数字に変わった。

 停電などがあると「時刻がズレてる」と苦情の電話が入るそうで、時計台は市民にとっても生活に根付いた存在となっている。

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柔らかい夕日に照らされる時計台。85年にわたり、存在感を放ちながら時を刻んでいる(高知市追手筋2丁目)
柔らかい夕日に照らされる時計台。85年にわたり、存在感を放ちながら時を刻んでいる(高知市追手筋2丁目)
 この時計台をわざわざ見に来る人もいる。アニメーション映画「君の名は。」ほどではないが、追手前高校の時計台も“聖地巡礼”の地となっているからで、その作品は1993年にスタジオジブリが製作した、高知の伝統私立中高を舞台にした「海がきこえる」。作家、故氷室冴子が、多感な高校生を描いた青春ラブストーリー。

 ロケハンで高知を訪れた望月智充監督ら一行が「時計台が目について、中を見せてくださいと入ったら学校だった。作品にそのまま使えた。あれは幸せな出会いだった」と述懐している。

 DVDを見た人が、県外はもとより外国からもやって来て、「写真を撮らせて」「校舎を見たい」と言ってきている。

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地上15メートルの時計台内部。文字盤の裏ぶたには数十年前の生徒らによる落書きも残る(高知市追手筋2丁目)
地上15メートルの時計台内部。文字盤の裏ぶたには数十年前の生徒らによる落書きも残る(高知市追手筋2丁目)
 時計台は、校舎(12メートル)より高い15メートル。その上、洋風の建物に屋根だけ日本の伝統的な仏教の様式を持ち込んだ「帝冠様式」でインパクトがある。日曜市を歩いていた観光客が時計台を見て、「お寺と思って来たら、学校だったのでびっくりした」と話していた。

 高知文化財研究所の溝渕博彦代表(64)は「風水害が多い土地だから安全安心な建物をと、当時主流の鉄骨と鉄筋に木造を駆使してできた白亜の校舎。その上にシンボル的な時計台を配置した建物は価値がある」と話す。

 さらに「景観的にも高知城から日曜市一帯の通りは、高知の歴史と文化が凝縮された街並みが残る。この通り沿いに長い白壁の昭和の建物が残っているのは観光客が見てもインパクトがある」。

 池校長も「構内に入ってまで撮影はしないが、校門の所から写している観光客は多い」と話す。

時計台をシンボルとする追手前高の校舎(高知市追手筋2丁目)
時計台をシンボルとする追手前高の校舎(高知市追手筋2丁目)
 高知県もこのシンボリックな建物を観光面に生かそうと2010年に「高知にぎわい東西軸活性化プラン」を作成。ゴールデンウイーク、シルバーウイーク中はもとより、日曜市を訪れる観光客の求めに応じ、トイレを開放している。

 周囲には、高知県と高知市が建設中のみらい科学館が入った新図書館や山内家の宝物資料などを収蔵する高知城歴史博物館が新たな観光スポットとして加わる。これらをうまく活用できるプランがあればいいと思う。

カテゴリー: 社会文化・芸能教育高知中央


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