2016.10.17 08:15

社会への愛情と危惧歌う 沢田研二さんが10/29に高知公演

熱唱する沢田研二さん。3・11が巡ってくるたび、新作を発表し全国公演に出ている
熱唱する沢田研二さん。3・11が巡ってくるたび、新作を発表し全国公演に出ている
震災後、毎年3・11に新作発表
 ポップスターとして1960年代から活躍し幅広い年代の人々に支持されてきた沢田研二さん。2011年の東日本大震災後、毎年必ず3月11日に新作アルバムを発表している。5枚目となる2016年春の「un democratic love」は全て自分の詞で、愛と平和や、復興が遠い福島のこと、原発再稼働などを歌い、現状のゆがみを招いている者たちを痛烈に批判している。2017年にデビュー50年を迎えるジュリー。その詞を通し彼のまなざしの中には、社会への愛情と危惧があるのだと分かる。10月29日に、高知市の高知県民文化ホールでコンサートが行われる。

 新作は4曲入り。その中の「福幸よ」は〈青空痛い 流れた何もかもと 後悔に懺悔 忘れるもんか〉〈福幸は遠すぎて 幸福を遠ざける〉と歌う。原発事故が起きた福島は、復興スローガンと現実のギャップが激しい。人々に幸せが戻るように、という思いが曲名にこもる。「犀か象」は〈安心のため犀か象 万が一にも犀か象 リスクだらけなのに犀か象〉。言葉遊びが一層、脱原発への強い意思を伝えてくる。

新作「un democratic love」と、これまで3・11に発表した作品など
新作「un democratic love」と、これまで3・11に発表した作品など
 3・11ごとに発表されてきた作品は、「3月8日の雲~カガヤケイノチ」(2012年)、「Pray」(2013年)、「三年想いよ」(2014年)、「こっちの水苦いぞ」(2015年)。いずれの曲も、危うい時代に対して強いシグナルを発し続けているように聞こえる。

■お茶の間の人気者
 1948年に両親の実家の鳥取で生まれ、京都市で育った。1967年にザ・タイガースのボーカルとしてデビュー。グループサウンズブームの中心となった。1971年に解散した後もソロで活躍。「危険なふたり」、「時の過ぎゆくままに」、「勝手にしやがれ」、「カサブランカ・ダンディ」、「TOKIO」、「ス・ト・リ・ッ・パ・ー」などヒット曲を連発。ドリフの「8時だョ!全員集合」などバラエティー出演で人気を集めた。

 数々のヒット曲を連発してきたポップスターは、人々の憧れを投影する鏡のような存在とも言える。終身雇用の会社が多く中流層が厚かった1970~1980年代は、お茶の間のテレビ番組を家族そろって見ることもできた。歌謡ベストテン、バラエティー、ドラマなどテレビを通じ、世代間の記憶は少なからず共有しやすかった。やがて安定した仕事口が減り、長期的な暮らしの展望が見えなくなってくると、人々の気持ちの中に不安が増大。抑圧する側に寄り添おうとする言動が、より生まれやすくなっている。

 エンターテイナーとして、自らの身体に投影される人々の思いを引き受けてきた沢田さんは、社会の変容を敏感に感じ取ることができるのかもしれない。

■我が窮状を歌う
 2006年に第1次安倍政権が教育基本法を変え、防衛庁を省に昇格させ、戦後民主主義の方向性を変えるかじを切った。2008年のアルバム「ROCK,N ROLL MARCH」に収めた自作詞の「我が窮状」は、憲法改正への危惧をそのまま歌っている。〈麗しの国 日本に生まれ 誇りも感じているが 忌まわしい時代に 遡るのは賢明じゃない〉〈諦めは取り返せない 過ちを招くだけ この窮状 救いたいよ 声に集め歌おう 我が窮状 守れないなら 真の平和ありえない〉

 こうした思いが揺らぐことなく、3・11後に一層強くなって発し続けられているのはごく自然なことだろう。

 一連の作品が理屈の言葉ではなく、誰にも伝わるような言葉で、駄じゃれや遊び心を含めて作られているのは、エンターテイナーとして培ってきた力を決意して注ぎ込んでいるかのようだ。例えば前々作の「三年想いよ」に収録した「東京五輪ありがとう」は、〈東京五輪万々歳 東京五輪おめでとう 被災地を救うため 東京五輪ありがとう〉〈あの町を 忘れないで 想い出して 遠い町の出来事じゃない〉〈I・O・C完全ブロック 表なしね アンダーコントロール 騙す訳ない〉とくぎを刺す。

 そして、今作のタイトル曲はピアノのミディアムバラードで〈いつもなし崩しだ 会話にならない 聴く耳持たなきゃ 大人だよね〉〈君の愛は冷酷 君の愛は不遜 命の重さに気づかないんだ 君の愛は脆弱 君の愛は違憲〉と歌っていて、誰に当てて書いたのかがすぐ分かる。ジュリーが本気だ、ということも。

10月29日に高知公演 チケット販売中
 沢田研二さんは毎年3・11の新作CD発表と全国ツアー、音楽劇公演を続けている。今ツアーの高知公演は29日午後5時半から、高知市の高知県民文化ホール。7千円。新曲やこれまでのヒット曲など20曲以上を歌う。県民文化ホールd-ticketチケットぴあイープラスなどで販売中。

カテゴリー: 文化・芸能高知中央


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