2019.06.07 13:37
高知の海にミクロな「絶景」 サラリーマンが撮る魅惑の世界
投稿しているのは、高知市在住の会社員ゆうじさん(@sea_slug_0509)こと片山雄史さん(34)。平日は衛生管理の会社で働きながら、休日には海に出かけ生き物を採集し、シャッターを切っている。
名古屋出身の片山さんは、物心ついた時から大の虫好き。図鑑を読みあさり、両親らと山に入ってはさまざまな昆虫を捕まえ、観察することに喜びを感じる子どもだったという。
昆虫学を国内トップレベルで学びたいと愛媛大学農学部に進学。大学院まで進み、カブトムシの仲間で体長約3~5mmの「シリホソハネカクシ亜科」を専門に研究し、既存の種が5万種以上いるなか国内外で新種を発見するなど、自他共に認める虫のプロとなった。
大学院修了後2~3年は、アフリカやアジアなどで虫を採集する海外放浪の旅やフリーター時代を経て、知人の誘いで20代後半で現在の会社に就職。全国転勤がある会社だったが偶然赴任地となった高知で、思いがけない出合いが待っていた。
「何気なく訪れた柏島でウミウシと出合って。そこらへんの石をひっくり返すと、もうわらわら生き物がいるんです。これはすごいなと」
30年ほど虫を追いかけジャングルや山に入っていた生活から、突如開けた海の世界。その感動をTwitterに投稿している。
固定ツイートを更新しておきます。私は子供の頃から30年以上にわたり昆虫採集ばかりしてきましたが、この年になりついに「海にも色々な生き物いる」という事実に気がつきました。30年間、意識的に海と切り離されていた私がついに出会ったフロンティアは、普通に目の前にあるなんでもない海でした。 pic.twitter.com/w7dN6m5gQW
— ゆうじ (@sea_slug_0509) April 29, 2019
以来、大潮と重なる休日になると、採集&撮影グッズを持って高知市内から車を3時間ほど走らせ柏島の磯へ出かけ、引き潮の前後2時間程度、ウェットスーツに身をつつんで生き物を採集し、現地で撮影。帰宅後にフォトショップで画像編集をしたものの一部をTwitterに投稿している。
「ただの趣味なんですけど…」と何気なくはじめたTwitterへの投稿は、ネット上の磯好き仲間の目にとまり、数百もの「いいね」やRT(リツイート)が押されることも。
それにしても、プロ並みとも言える撮影技術はいったいどこで培ったのか。片山さんに聞くと、ハネカクシなどの虫を研究しはじめた学生時代から虫を撮り始め、撮りためた虫の写真は昨年時点で8,000枚をこえているという。
撮影を繰り返しながら、撮影手法やを編集スキルを独自に研究し、これがベストといえる境地にたどり着いた。Twitterでは仲間からのリクエストに応え、撮影方法を公開している。やりはじめたらとことん極めてしまう性格が、研究者らしい。
私がよくやる白バック写真の撮影方法をだいたい解説します。何かのお役に立てば幸いですm(_ _)m
— ゆうじ (@sea_slug_0509) August 4, 2018
ポイントは3つ。
1. ディフューザーの使用
2. 白いお皿(春のパン祭り)
3. Photoshopのトーンカーブ 白色点を設定
画質があまり良くないため見にくくてすみません。 pic.twitter.com/S7sFOai9L6
採集や撮影は「あくまで趣味、ずっと好きでいたい」と語る片山さん。(虫を採り始めた)3歳のころから変わらないという好奇心を持ち続けた結果、「縁もゆかりもなかった高知で、『磯の人』として取材されるなんて。人生わかりませんね」 (木田名奈子)