2018.02.15 08:00

声ひろば 2018年2月15日、木曜日

1.「いのちの仕舞い」
【田内啓子、68歳、書道塾講師、高知市】
 赤鉄橋、菜の花、桜、沈下橋、蛍の乱舞、アユの火振り漁、美しい四万十川の流れ。
 102歳の人、ポスターのお部屋の人、施設の糖尿病の人、寝たきりで20年の人。多くの地域の人々の元へ訪問する小笠原望医師。ドキュメンタリー映画「四万十~いのちの仕舞い~」を見た。
 大好きな歌手のポスターを何枚もはっているお部屋。「変わりはないかねえ。痛い所は? 食欲は? 三山ひろしは聴きゆうかねえ」と寄り添う言葉かけ。
 「先生、痛い所はない。三山さんの歌は全部、覚えちゅう。でも思う通りに体が動かん。家でねえ、小笠原先生で、コトッと仕舞いたい」。そう気丈に話していた彼女を、医師は何回かの訪問の後、みとる。
 家族のぬくもり、ゆく人からの感謝の言葉。四万十の流れと共に人々に寄り添う医師の自然体の姿。
 一方、施設で最期を迎えようとしている人の息子さんには、「今からは、点滴をせず、見守りましょう。ご自分の持っている物を全て出し切っていかれようとしている」と言われる。家族が静かにその時を迎える。
 医師は「よく頑張ったね」と声かけをし、最期の刻を報告される。映画を見ている私の目から、じわーっと涙が流れ、四万十の流れと重なり、後に医師の温かい歌声が聞こえる。

2.下がる食料自給率
【増田一郎、54歳、会社員、徳島市】
 農業の役割とは、国民に新鮮で安全な食料を安定的に供給することである。昨年8月、農林水産省は2016年度の日本の食料自給率をカロリーベースで38%と発表した。
 私は「平成の米騒動」のあった1993年を思い出した。その年は冷夏と長雨でコメの作況指数は戦後最悪の74、食料自給率は37%になった。当時は食糧管理法があって、コメを自由に売れなかった。
 政府はタイ、中国などから約260万トンのコメを緊急輸入した。16年度の食料自給率が93年の数字に迫ったのに、政府・与党からは危機感が感じられない。
 近年はコメの生産量は毎年8万トンずつ減り続けている。それは農業人口の減少や高齢化、耕地面積の減少など、生産基盤の弱体化が大きいと思う。
 そして今年は70年から施行された「減反政策」が廃止される。それは、生産過剰による米価の値崩れを防いだ政策であった。今後はそれに代わる農家への「収入保障制度」があるそうだ。
 私は減反政策の廃止で、食料自給率が急激に下がるとは考えていない。しかし政府・与党には食料生産の未来を守る役割があると思う。
 国際紛争による非常事態、想定外の自然災害が発生した場合に、どう対処するのか。国はもとより、私たち国民も真剣に考えるべき課題だと思う。

3.父の最期
【藤永夏、47歳、パート、香南市】
 高血圧で定期的に通院していた父。胸部エックス線を撮った際、肺に大きな影が見つかりました。全く自覚症状がない中でがんが見つかり、まだこれから人生を楽しもうとした矢先の入院となりました。家族には笑顔で接していたけれど、不安もあったかと思います。
 希望をもって治療に励み、一時はよくなり趣味を楽しんでいましたが、再発し再度入院治療が始まりました。日に日に、今までできていたことができなくなり落ち込むこともありました。
 しかし、医療スタッフの寄り添いの中で、本人の望みをよく聴いてくださり、自宅で過ごしたい父の望みをかなえるためケアマネさん、訪問医療の医師や看護師さん、デイサービスの皆さんの力をお借りし自宅で過ごすことができました。
 何でも相談できる福祉、医療の皆さんが関わってくださったおかげで、父は「ありがとう」を何度も口にし、最期は自宅で家族に見守られながら息を引き取りました。
 土佐市の福祉、医療の皆さんに大変お世話になり、安心して私たち家族も父を最期まで自宅で看取(みと)ることができました。本当にありがとうございました。

4.故郷便
【松山八重子、79歳、主婦、堺市東区=土佐町出身】
 末の妹から故郷便が届いた。しっかりと梱包(こんぽう)された小包は開けるのが楽しみだ。
 ハウスで育ったチンゲンサイは緑の葉が濃く元気をもらえそうだ。手作りのこんにゃくも入っている。何度も何度も形よくさすったのか、つややかで丸くプリンプリンしている。大根の漬物もおいしそう。妹の白い肌のようで、ほのかに甘い香りがする。お茶請けにもいけそうだ。うれしい。
 それに一足早い春のヨモギののし餅、ピリとした塩加減が妹の特技だ。ヨモギも寒い今どこで採ったんだろう。採るのに時間を要したに違いない。手先も真っ赤になっただろうに申し訳ない。
 皆、大好物ばかり。どんな思いで作ってくれたのだろう。喜ぶ笑顔を思いながら一つ一つ丹精込めて…。やさしさを感じ、感謝しながら大切にいただく。
 スーパーに行けばどれもこれも手に入る。でも、ぬくもりや感動がない。田舎に住んでいた頃、特別な思いもなく、ああおいしいのが当たり前のようにいただいた。故郷を離れてみて、はじめてありがたさが胸が痛いほどによくわかる。
 兄妹それぞれに思いの物を送ってくれる。本当にありがたく誇りに思う。ありがたい故郷が私にはある。幸せに思う。

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