2018.01.12 14:30

ターシャ・テューダー 静かな水の物語

庭にいるだけで絵になるターシャ・テューダー((C)2017 映画「ターシャ・テューダー」製作委員会)
庭にいるだけで絵になるターシャ・テューダー((C)2017 映画「ターシャ・テューダー」製作委員会)
スローじゃない過去 時間かけ築いた暮らし 「今が一番いい時よ」
 最近やたらと目にする「丁寧な暮らし」。生活の全てにこだわりを持ち、素材や季節感を大切にする暮らしのことだ。愛知県の老夫婦の自給自足的生活を追ったドキュメンタリー映画「人生フルーツ」も昨年、大ヒットした。だが仕事や育児に追われる人々には少々難しい。完璧な家事は働くママを追い詰めるような気もする。

 元祖スローライフといえばこの人が思い浮かぶ。米国の絵本作家、ターシャ・テューダー。バーモント州の山奥で18世紀風の家に住み、植物や動物を愛(め)で育て衣食住にまつわるものを自ら作った。NHKで特集番組が何度も再放送され、憧れる女性は多い。映画は番組スタッフが映像を劇場用に再編集したもの。2008年に92歳で亡くなったターシャ。その後の家の様子や息子、孫のインタビューも収めている。

 生い立ちを映画で初めて知った。ボストンの裕福な家に生まれたが社交界より、農場で暮らす道を選んだ。23歳で結婚し、4人の子どもに恵まれるが、「夫は稼ぐ能力がなかった」と笑う。生活のために絵本を描き、働きづめだった。40代で夫と離婚した。後に別の男性と再婚したが、すぐに別れている。ターシャの半生は全然、スローではなかった。

 広大な庭でお茶を飲む暮らしを送れるようになったのは、子育てが終わった57歳から。昔の農村風の家は長男が工法を研究し、建ててくれた。長男や孫も庭の手入れを手伝った。細かく指示し、時折、眼光が鋭くなるターシャ。美学を貫くために一切の妥協を許さなかった。

 「今が一番いい時よ」「私は静かな水のようにありたい」と穏やかな笑みを浮かべる。恵まれた生い立ちや男に頼らず、自分の理想郷をコツコツと築いていった。結果、彼女の周りには必要なものしか残らなかった。ターシャのように、過去を笑って振り返られる老後を送りたい。

 高知市高須の県立美術館ホールで23日午後1時半、4時、7時から。1300円(当日1500円)。シニア・障害者1300円。高校大学生800円。高新プレイガイドなどで販売中。シネマ・サンライズ主催。

 (村瀬佐保)

カテゴリー: シネスポット文化


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