2018.01.04 08:00

【岐路の年 経済】暮らし底上げの成長へ

 米国が景気後退から抜け出した1962年、ケネディ大統領は議会演説の中で、こう訴えた。
 「太陽が出ている間に屋根は修理しなければならない」
 景気が回復した時こそ慢心せず、財政や社会の課題に手を打つ必要がある、との呼び掛けである。
 世界の経済はこの1年で明るさが戻ってきた。不安材料の「雲」は多いが、「太陽」が顔を出す。
 国際通貨基金(IMF)は昨年10月、2017年の世界の成長率見通しを3・6%とした。7月時点より0・1ポイント上方修正した。
 日本については1・5%とみる。世界に比べれば低さは否めないが、0・2ポイント引き上げている。
 国内の景気拡大は昨年秋、高度経済成長期後半のいざなぎ景気(57カ月)を超えたとみられている。日経平均株価も11月、約26年ぶりに一時2万3000円台を回復した。
 問題は、国民生活の中で好景気の実感が乏しいことだ。
 国内総生産(GDP)がよく示している。直近の7~9月期は輸出がけん引し、全体では7四半期連続のプラス成長となったが、個人消費は前期比0・5%減だった。
 政府や日銀は経済の好循環を目指し、アベノミクスや「異次元」の大規模金融緩和を続けてきた。既に約5年に及ぶ。
 一定の成果は否定しないが、個人消費は低迷したままだ。当初2年程度で達成するはずだった2%の物価上昇目標も未達である。消費が伸びないのは国民が暮らしに不安を抱えている証しだ。企業業績に比べ賃金の上昇が鈍いこともあろう。
 政策の限界やひずみは明らかだ。手を打たなければ、格差が広がる一方の政策になる。国民が望んでいるのは暮らしの底上げにつながる成長だ。新年の大きな課題である。
 日銀は大規模金融緩和で、国債や上場投資信託(ETF)を大量に買い続けている。一部にマイナス金利も導入した。
 市中に資金を供給するためとはいえ、非常時のカンフル剤注入が常態化しているに等しい。副作用は大きく、官製相場を生んだり、財政規律が緩んだりしかねない。銀行は収益低下に悲鳴を上げている。
 米国は利上げを進めており、欧州も量的緩和の縮小を決めた。日銀も出口戦略を急ぐべきだ。
 経済界も課題に向き合ってもらいたい。人口減少時代にふさわしい働き方改革を進め、相次ぐ企業不祥事の根を断つことも、業績が上向いている今こそだ。
 18年の世界経済についてIMFは成長率3・7%を予想するが、楽観はできない。北朝鮮の核・ミサイル問題や米国の保護主義的な通商政策など多くのリスクを抱える。
 それらの影響がより大きい日本はなおさらだ。IMFは前年より大幅減の0・7%とみる。
 屋根を修理しないまま「雨」になれば、国民の暮らしは悲劇だ。新年の方向性が将来を占う。
カテゴリー: 社説


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