2017.12.28 08:00

【あおり運転防止】回避手段の啓発も必要だ

 車で走行中、後続の車に詰め寄られたり、並走する車に幅寄せをされたりして、恐怖を感じた運転者は少なくないだろう。
 そうした「あおり運転」などで重大事故を引き起こす恐れがある運転者に対し、免許停止の厳罰規定を適用するよう、警察庁が全国の警察に指示した。違反点数の累積がなくても、最長180日間の免停にできる道交法規定を積極活用する。
 神奈川県の東名高速道路で6月に起きたワゴン車の夫婦死亡事故がきっかけだ。静岡市の家族が乗ったワゴン車を福岡県の建設作業員の男が乗用車であおり、進路をふさいで停止させたところへ、大型トラックが追突した。
 男はパーキングエリアで駐車位置を巡って注意され逆上、時速100キロ前後の高速運転でしつこく追い回し、追い越し車線に立ち往生させた上、夫婦を引きずり降ろそうとしていた。凶暴で、危険極まりない。
 そうした危険運転による威嚇や嫌がらせ行為は全国で頻発しており、事故や暴力事件に発展した事例は少なくない。
 警察庁のまとめでは、あおり運転などによる「車間距離不保持」での道交法違反の摘発は今年1~9月に全国で5200件を超える。日本自動車連盟(JAF)のインターネット調査でもあおり運転に遭った経験者は半数を上回った。
 東名高速道路の事故を引き起こした男は、事故の約1カ月前にも山口県内で3件の進路妨害などを繰り返し、うち1件で同県警に自動車運転処罰法違反(過失傷害)で摘発されていた。あおり運転の常習性をうかがわせる。
 前方への割り込みや追い越されたことに激高し、前に割り込んで妨害したり、停車させて暴力を振るったりして報復する行為は「ロード・レイジ」と呼ばれ、海外でも問題になっているという。
 警察庁が指示した免停規定は、危険運転による罪を犯した運転者や、著しい危険を生じさせかねない薬物使用者らを「危険性帯有者(たいゆうしゃ)」とし、免停の行政処分を科す。今年8月、大阪で生徒児童の通学路を車で暴走した動画をネットに投稿した少年らにも適用された。
 危険運転の被害は、自分がどんなに注意を払っていても、一方的に巻き込まれる恐れがある。東名高速道路の事故以降、自衛策として、走行状況を撮影するドライブレコーダーを取り付ける運転者が急増しているという。日常的に不安を抱く人がいかに多いかを物語る。
 当局は取り締まりの強化や厳罰化だけではなく、危険行為に見舞われた際の対処方法や回避手段の啓発にも力を入れるべきだ。凶暴運転に走らせるドライバー心理の分析や矯正の研究も必要だろう。
 ワゴン車の夫婦は同乗していた娘2人の目の前で命を奪われた。その悲劇の後もなお、あおり運転に絡む犯罪は後を絶たない。実効性のある再発防止策が急務だ。
カテゴリー: 社説


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