2017.12.25 08:20

太平洋カツオ乱獲懸念 集魚装置の規制緩和へ 高知県内に危機感

 カツオやマグロの漁獲ルールを決める中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)の年次会合が今月上旬、フィリピン・マニラで開かれ、巻き網でカツオなどを取る際に使われる人工集魚装置(FAD)の規制緩和が決まった。水産庁はカツオ資源が減少する可能性について明言を避けるものの、高知県のカツオ漁関係者からは「南方での巻き網による漁獲量が増えるのは確実だ」と懸念の声が上がっている。

 FADは浮遊物の周囲に魚が集まる習性を利用した装置で、ブイや竹で組んだいかだ状の浮遊物などを洋上に流し、カツオやメバチマグロ、キハダマグロなどを寄せ集める。漁船に位置を知らせる発信機や魚群探知機が付いたものもあり、熱帯海域で大量に使われている。周囲に集まる大小の魚を巻き網で一網打尽にするため「乱獲」との批判がある。

 WCPFCはメバチの資源状態の悪さを理由に2014~16年、FADを使った巻き網操業を年間4カ月相当禁止。さらに17年には公海での規制を拡大し、FAD使用を年間を通じて禁じた。

 今回の決定は、18年の禁止期間を公海で年5カ月間に、公海以外では3カ月間に緩和した。今年8月に採用された新しい計算方法により、メバチの資源評価が上方修正されたためだ。

 水産庁によると、日本以外の全参加国・地域がこの評価を基に規制緩和を求め、禁止期間の撤廃を望む声もあったという。これに対し日本側は規制維持を求め、1隻当たりが海に浮かべられるFADを「350個以下」とする規定を新たに提案し、追加が認められた。

 交渉団を率いた太田慎吾資源管理部審議官は直後の会見で、「譲った部分もあるが、得た部分もある。なんとか押し返した結果だ」と理解を求め、資源への影響には「それほど大きくないのではないか」との見方を示した。

 ただ、日本のカツオ関係者にはFADの操業規制を「頼みの綱」とする見方もあった。WCPFCのカツオに対する資源評価は「潤沢」で、カツオに絞った管理措置強化への道は遠い。そんな中、メバチの資源状態が低いことを「とっかかり」にカツオを守る、という期待があった。

 現地で傍聴した高知カツオ県民会議の中田勝淑(かつひで)副会長(高知かつお漁協組合長)は「FAD操業で一番取られるのはカツオ。(今回大幅に規制緩和された)公海のカツオは、日本に北上してくる可能性がある魚だと思う。影響が非常に心配だ」と危機感を強めている。

太平洋の漁業を巡って各国がせめぎ合うWCPFCの年次会合(12月6日、マニラの国際コンベンションセンター)
太平洋の漁業を巡って各国がせめぎ合うWCPFCの年次会合(12月6日、マニラの国際コンベンションセンター)
水産資源確保へ各国攻防 カツオ県民会議 初国際舞台 マニラ
 高知県の産官学有志でつくる「高知カツオ県民会議」のメンバーが今月5~8日、フィリピン・マニラで開かれた中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)の年次会合に初めて参加し、各国政府代表などと接触してカツオ資源の維持へ連携を求めた。加盟26カ国・地域による国際会議は水産資源の争奪戦さながら、各国の強い思惑がせめぎ合った。

 現地入りしたのは、受田浩之高知大学副学長(県民会議会長代理)や後藤昌弘全日空高知支店長、県水産振興部職員ら6人。

 会議は毎日午前9時に始まり、午前と午後にティータイムが1回ずつ。昼食も会場内に用意される。これらの休憩時間を利用して、県民会議のメンバーは関係国、関係団体に接触した。

■関係国と接触
 ミクロネシア連邦国家海洋資源管理局のユージン・パンゲリナン局長は県民会議の主張に、「私たちの国にとってもカツオは重要な資源。生計の手段として頼っている漁民が多いのです」と応じた。

 同国は太平洋島しょ国の一員で、WCPFCの本部も置かれている。同局長は次々に呼び止められる、会場で最も忙しい人物の一人だった。

 「経済発展のため」自国の漁業や他国からの入漁料収入が重要で、日本が求めるようなカツオの漁獲規制をそのまま受け入れるわけにはいかないが、「日本のカツオ漁(低迷)について何度も耳にしている。高知の人々への影響を最小限に抑え、最良の協力の道を見つける対話関係の構築が必要です。高知に行って、あなた方のシンポジウムにも参加したい」と、連携に前向きな姿勢を示した。

 県民会議メンバーは他にも、高知大出身のインドネシア政府代表メンバーや、島しょ国の連合体「FFA」の事務局などにも活動の趣旨を伝え、連携策を探った。

■大きな配慮を
 会議は国際コンベンションセンター内の体育館のような会議場で開かれた。コの字形に置かれた机に各代表団が並び、その周りにNGOなどの「オブザーバー」が陣取る。周囲の巨大な電光掲示板に議題が映し出され、マーシャル諸島の女性議長が仕切る。

 県民会議メンバーが傍聴していた6日。「JAPAN」と書かれたプレートを挙げて水産庁の太田慎吾資源管理部審議官が発言を求めた。

 「カツオが枯渇するのではないかという危惧が生まれ、私たちの産業や伝統、文化などに直結する大きな問題になっている。カツオの措置に大きな配慮をお願いしたい」

 これに対し、カツオの漁獲規制に消極的な太平洋島しょ国もすぐに発言を求め、「議論をリードする日本を評価する」としながらも、「すべての決定は科学的根拠に基づくべきだ」とくぎを刺した。

 会合期間中、利害がぶつかる協議は本会議を度々中断し、別室で行われた。

■未明まで激闘
 議題の採択が中心となる最終日、「全会一致」を基本とする協議は難航した。終了予定の午後6時を過ぎても閉会の見通しは付かず、深夜に至っても合意文は加筆、削除、書き換えが繰り返された。

 各国代表は単語ひとつ、微妙な文章のニュアンスに目を凝らし注文を付ける。

 「私の頭が悪いのかもしれないが、○○国の主張の意味が分からない」「○○国の発言は誤解を招く。もうやめようと思っていたが反論せざるを得ない」「どうか、みなさんクリスマスプレゼントだと思って妥協してほしい」―。やりとりは、激しい。疲れても時間オーバーでも、それぞれが国益を背負っているのが伝わってくる。

 「おはようございます。議長」

 発言を求めた男性が笑いを誘った。既に日付が変わっていた。すべての議事が終了したのは午前3時。

 “激闘”の後、空席の目立つ会場に重いリズムの拍手がぱちぱちと響いた。各国代表は疲れ切った表情。NGOの傍聴席には、前夜から飲み始めたフィリピンビールの空き缶が転がっていた。

 県民会議の発起人の一人で土佐料理店経営の竹内太一さんは「会合を実際に見て、カツオに関して日本政府団が頑張っていると感じた。国内外のネットワークづくりなど、交渉を後押しするために県民会議としてできることを、優先順位を付けて実行していきたい」と振り返った。

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カテゴリー: 政治・経済カツオ県民会議主要社会


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