2017.12.25 08:00

【日欧EPA妥結】自由貿易は備えてこそだ

 日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)交渉が妥結し、政府が国内の農林水産業への影響額や対策なども公表した。
 双方は来年の早い時期の発効を目指している。世界の国内総生産(GDP)の約3割を占める巨大な自由貿易圏が動きだす。
 米国が離脱した環太平洋連携協定(TPP)の交渉も11月、残る11カ国で「大筋合意」した。米国の保護主義的な通商政策が世界を揺るがす中、EPAやTPPの行方は、今後の自由貿易の方向性を占う試金石にもなりそうだ。
 EPAは発効すると、輸入品にかかる関税が即時撤廃されたり、段階的に引き下げられたりする。日本が得意とする自動車や家電などの輸出拡大が期待される。
 国内の市場は人口減少で先細り状態にあり、協定が持つ可能性は大きい。消費者には輸入品の価格が下がることも歓迎されるだろう。
 それは同時に、欧州が得意とする分野で日本市場に攻勢をかけてくることを意味する。
 協定によると、コメは関税撤廃・引き下げの対象外だが、農林水産のEU産品は82%が即時または将来、撤廃される。輸入量が多い乳製品や豚肉、ワインなどの国内生産関係者は危機感を強めている。
 カマンベールなどのソフトチーズは現行30%近い関税が段階的に引き下げられ、16年目に無税となる。ワインの関税は即時撤廃だ。
 低価格帯の豚肉は1キロ当たり最大482円の従量税が10年目に50円にまで下がる。県内業者の生産への影響も少なくないはずだ。
 本県関係では、林業関係も気になる。直交集成材(CLT)や構造用集成材は3・9%が8年目に撤廃される。
 政府は21日、11カ国のTPPとともにEPAについて影響や効果の試算を公表した。EPA発効に伴う国内の生産減は最大1100億円で、うち構造用集成材などは最大371億円、豚肉は最大236億円とはじく。
 対策として、国産チーズのコスト削減や高品質化の支援や、協定発効後は畜産農家の赤字補塡(ほてん)の拡充なども掲げている。
 EPAの恩恵を享受するために、生産者を見捨てるようなことがあってはならない。悪影響を受ける恐れがある産業の足腰を強める対策が急がれる。
 政府の今回の試算はお手盛りの感も拭えない。示した対策の効果も分かりにくく、生産者の納得が得られるとは言い難い。協定ありきの甘い予測や対策になってはいないか。来年の通常国会でも十分な論議が求められる。
 農林水産分野は品目によっては、輸出拡大への道も開ける。工業品とともにしっかりと後押ししたい。
 自由貿易の推進は備えあってこそだ。政府は、自治体や業界団体などとも連携し、万全を期すことが求められる。もちろん発効後も検証や見直しが常に必要だ。
カテゴリー: 社説


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