2017.12.19 08:00

【生活保護の減額】安易な弱者切り捨てだ

 厚生労働省が、生活保護費のうち食費や光熱費などに充てる「生活扶助」の支給額を最大で約5%減らす方針を打ち出した。
 年齢や世帯の形などによって異なるが、当初は全体で最大約14%減らす方向で検討していた。
 専門家の意見を聴くため審議会の部会に示したところ、「生活に急激な変更を生じさせない配慮が重要。(数字を)機械的に当てはめることのないよう強く求める」と、慎重な判断を求められた。結局、厚労省は数日で下げ幅の縮小を決めた。
 それほど短期間で修正するのなら、当初の数字は一体何だったのかとなる。十分に検討し確かな根拠があったのかどうか、疑われても仕方ない。部会に数字が示されたのが、政府の予算編成が最終盤を迎えた今月だった点にも疑問を抱く。
 日々欠かせない「生活扶助」を減らされれば、たちまち暮らしに響くはずだ。受給者の生活実態を厚労省はどこまで把握しているのか。弱者に対する姿勢が、あまりに安易というしかない。
 生活扶助の支給水準は、5年に1回見直している。全国消費実態調査の結果を基に、一般の低所得層の支出と比べてバランスが取れているかを重視する形だ。
 生活保護を受けているのは9月時点で約164万世帯、この20年で約2・7倍となった。ほぼ半数を占めるのが1人暮らしの65歳以上である。病気などで就労が困難な人、年金未加入や保険料の納付期間が足りない「低年金」の人が多い。
 そもそも生活保護は、実際に必要とする人々の約2割しか受給していないと指摘される。社会保障制度の隙間に陥って困窮する人が全体に増える中で、生活扶助を見直す方法そのものが現実に合っているのか、考える必要があるといえる。
 厚労省は審議会の部会から、生活扶助の算定方法について「最低生活を保障する水準を満たすものと言えるのか、検証する必要がある」と異例の言及も受けている。
 2013年度の前回見直しでは、生活扶助は6・5%削減、家賃に充てる住宅扶助なども減らされた。財政事情が厳しいとしても、引き下げばかりではセーフティーネットとして機能しなくなる恐れがある。
 今回は、自民党が廃止し民主党政権時に復活したひとり親への母子加算も、子ども1人なら、平均月額2万1千円から4千円減らすという。
 厚労省は生活保護世帯の高校生が進学する際の一時金として、最大30万円を18年度から支給する方針でもある。
 教育機会を確保し、世代間の貧困の連鎖を防ぐ支援策だ。安倍首相は子どもの貧困対策に力を入れるとは言うものの、一方で生活扶助などを減らすようでは生活保護世帯を翻弄(ほんろう)するに等しくないか。
 国民の命と平和な暮らしを守ると首相は防衛費を増やす考えだ。一方で憲法が保障する最低限の生活が揺らぐことがあってはならない。
カテゴリー: 社説


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