2017.12.16 08:00

【与党税制大綱】中途半端で理念を欠く

 2018年度の税の方針を示す税制改正大綱を自民、公明両党がまとめた。
 目につくのは個人の負担増を求める内容だ。所得税を見直すことで、比較的高い所得の層にはさらに負担を求める。ただし、自営業者や組織に属さずフリーで働く人々は減税とする。
 働き方は多様化し、格差は解消されない。所得税には多く稼いだ人が多く支払うことで、所得を再分配する機能がある。諸課題の解消に用いようということだろう。
 ただ政府・与党の所得税見直し方針が明らかになったのは、衆院選後の11月初めだった。その後の与党の論議は、増税となる層の所得に関する線引きに終始した感が強い。小手先の見直しに終わり、スピード決着を図ったとしか受け取れない。
 見直しの柱は、課税所得を計算する上で差し引ける控除額の変更である。誰でも受けられる基礎控除の金額を増やし、会社員など向けの給与所得控除の額は減らす。
 これによって、年収850万円を超える会社員や公務員ら約230万人が増税となり、自営業やフリーで働くなど約300万人が減税となる。
 雇用環境の変化に応じて、不公平感を減らそうとしているのは理解できる。だが増税となる会社員らの年収をなぜ850万円で線引きしたのか、納得できる説明はない。
 企業には優遇が目立つ。3%以上の賃上げ、設備投資などを条件に法人税を減らす。
 景気は回復しているとはいうものの、消費は伸び悩み、好況の実感は広がらない。2016年度に400兆円を上回った大企業の内部留保を、法人減税のアメによって賃上げと消費に結び付けようとする狙いだ。どれほど効果を上げるのだろう。
 中小企業の休廃業や解散の多さに配慮し、後継者に相続する際の税負担を一定期間、猶予する支援策を盛り込んだのは、地域の雇用を守る面でも評価できる。
 全体的に、取りやすい層にしわ寄せが及ぶ構図は相変わらずではないか。「公平・中立・簡素」が税の三大原則のはずである。
 「国際観光旅客税」はその典型といっていい。訪日外国人旅行者や日本人が出国する際、1人千円を徴収する。外国人旅行客の増加を受け、9月に観光庁の有識者会議で「出国税」として浮上した後、短期間で導入となった。
 24年度には「森林環境税」が創設されるという。山の保全に財源が必要だとしても、既に森林税がある高知県などでは二重課税ではないか。違いを明確にすべきだ。
 家計への負担は、2800億円も増える見通しという。負担増を求めるなら、公平に分かち合う仕組みが不可欠のはずだ。
 収入や所得に応じて、高齢者も含めた応能負担の在り方を目指す方向は避けられまい。それにもかかわらず、大綱はあまりに中途半端で理念を欠いている。
カテゴリー: 社説


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