2017.12.07 08:00

【NHK受信料】国民の信頼をまず高めよ

 テレビを設置しただけでNHKに受信料を支払う必要があるのか―。これまでも訴訟や学界で論争になってきた問題に、最高裁大法廷が初の憲法判断を示した。
 きのう、受信契約を拒否した男性にNHKが受信料の支払いを求めた訴訟の上告審判決があった。大法廷は、NHKと受信契約を結び、受信料を支払うのは法的義務であり、「合憲」とした。
 現行の受信料制度に司法が一定の「お墨付き」を与えたことになる。同様の訴訟や今後の徴収業務にも大きな影響を及ぼしそうだ。
 現状で受信料を支払ってない世帯は2割に上るという。支払った側から「不公平だ」との声が上がるのは当然だ。
 公平な負担を実現したい。気掛かりなのは最高裁判決を根拠に訴訟が増えたり、支払いを法で義務化する動きが強まったりしないか、だ。
 国民の信頼を得て、進んで支払う世帯が増えるのが本来の公共放送の姿であろう。徴収権限を振りかざすことがあってはなるまい。最高裁判決を見誤ってはならない。
 放送法は、受信装置を設置した場合はNHKと受信契約を結ばなければならないと定めている。受信料の支払い義務までは明記していないため、不払いを生んできた。
 訴訟で男性側は、放送法の規定は「法的拘束力のない努力規定。受信料を支払う必要はない」と主張。受信契約を強制することは、「契約の自由」を保障する憲法に反すると訴えていた。
 公共放送は災害時などに重要な役割を担う。安定した経営で質の高い放送を実現するために維持費を公平に分担するのは意義があろう。大法廷は、国民の知る権利を充足する目的にかなう合理的な仕組みで、憲法上許容されるとした。
 テレビの受信環境は、ワンセグ付き携帯電話やカーナビ、テレビ付き賃貸アパートの出現など多様化している。支払い義務の司法判断も分かれているのが実態だ。
 インターネットで視聴する人から受信料を徴収できるかどうかも論議になっている。受信料を巡る論争は今後も続くとみられる。
 人口減少や若者のテレビ離れも、NHKの経営にとっては現実的な課題といえる。こうした時代の変化にNHKにまず求められるのは、国民からの信頼を高めることだ。
 NHKは十数年前から、番組制作費の詐欺事件や職員の逮捕などが続いている。受信料の不払いと無関係ではあるまい。
 トップが「政府が右と言っているものを、われわれが左と言うわけにはいかない」と発言し、「政治との距離」が取り沙汰されたこともある。公共放送の独立性や中立性を揺るがすものだ。
 公平負担を徹底するなら、NHK自身が信頼回復に努め、公共放送の理想を追求していかなければならない。経営の効率化や透明性に力を入れるのも当然である。
カテゴリー: 社説


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