2017.12.08 08:00

奇跡の笑顔 全盲・重複障害を生きる(43)「そりゃ、楽しいですよ」

レク活動。お月見の時は紙芝居の後、団子を作った(高知市朝倉南町の重症児デイ「いっぽ」)
レク活動。お月見の時は紙芝居の後、団子を作った(高知市朝倉南町の重症児デイ「いっぽ」)
かわいさに時間が止まる
 「オープンまでは地獄みたい。でも、始まったら本当にやって良かった。毎日が楽しい」と話していたのは茨城県で3月に重症児デイ施設を立ち上げたお母さん(第3部で紹介)。いっぽ(高知市)の山崎理恵さんは、その言葉を支えに頑張ってきた。「地獄」は体感したが、「楽しさ」はどうなのか。

 「そりゃ、楽しいですよ、お子さんが来る時は。かわいいですからねえ。見ていたら時間が止まるというか」と言いつつ、「いろんな計画を立てて、それに沿って子どもの成長、発達をきちんと評価しながら見ていく義務もありますからねえ…。『かわいいね』だけで済む仕事じゃないことも実感してます」と難しさも口にする。

 職員はどうか。今春まで9年間、小児担当の訪問看護師として県内各地の重症児家庭を回っていたベテラン、中屋光代さん(46)は、また違う楽しさを感じていた。

 訪問看護だと、1家庭で1~2時間までの接触。医療ケアを集中的に行い、また次の家へ。子どもと落ち着いて関わる余裕はない。だが、「いっぽ」は違う。

 「半日一緒にいるから、笑顔もたくさん見ることができるし、訓練士、ヘルパーさんとミックスで支援するから、考え方が広がるんです。お母さんの一日の大変さにも思いをはせ、私たちがここで何を代行できるかも考えさせられる。すごく勉強になるんです」

 半面、怖いのは薬の取り違え。訪問看護は、その家庭の薬だけを使うので間違う余地はないが、「いっぽ」では同時に4、5人分扱う。「けいれん止めの薬とか栄養剤の種類、量がそれぞれ違うので、交差するのが一番怖い。ピリピリです」と気を引き締める。

    ◇  ◇

 「いっぽ」の一日を紹介しよう。重症児だからそっと見守るぐらいとか、新生児集中治療室の延長と思ったら大外れだ。「どんなに障害が重くても、発達はある」が山崎さんの信念だけに、こだわっていた。

 平日だと小学生以上は放課後だけの短時間利用だが、未就学児は朝から夕方まで過ごす。「朝の会」の歌で始まり、日替わりメニューで「レク活動」。簡単なお菓子作りやミニ運動会で手足を動かすかと思えば、部屋を暗くして光の映像を壁や天井に照射し、プラネタリウムのようなこともする。天気が良ければ近くのスーパーへバギーで“買い物”。月に1度は「ロング散歩」と称して花畑へドライブもする。

 「その子に必要な刺激を見つけ、興味を持たせて、その子なりの発達を助けたいんです」と山崎さん。そのために、既に2回も東京から講師を招き研修会を開催。来春も熊本の小児在宅医を招く。

 昼食は1時間がかり。「おいしいねえ~」「もうちょっと~」とスプーンを口に運んでにぎやか。頻繁におむつ交換や痰(たん)吸引もしているうちに夕方が来る。

 「やりがい、ありますよね。音十愛のおかげで私は人生の目標が見つかったんです。あの子に導かれているようなもの。すごい子です。でも始まったばかり。目指すところまで、20年はかかるかなあ」

 利用者も増え、やっとひと息つけると思ったら、もう先を見ていた。休めばいいのに、と言いたくなるのだが、スタートしてみるとそうも言えない事情が二つも出てきたのだ。

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