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2016.05.16 07:25

奇跡の笑顔 全盲・重複障害を生きる(39)募金が止まらない!

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11月7日にもチャリティー公演で寄付を受けた山崎理恵さん(左から2人目)=県民文化ホール、国際ソロプチミストよさこい高知主催

さらけ出した勇気に共感?
 ここまで、重症児デイ「いっぽ」(高知市)のオープンまでの大変さに焦点を当ててきたが、その一方で、山崎理恵さんは、寄付というものすごい励ましにも包まれていた。

 障害児者施設にとって、スタート時の大きな悩みは、利用者送迎用の福祉車両の確保だ。山崎さんは送迎のありがたさを体感しているだけに力を入れたい。車いすが2台載る福祉ワゴン車2台、一般車1台の計3台をそろえたかった。だが、ワゴンの新車は約400万円もするから無理。取りあえず中古車1台を買い、あとはスタッフの車で、と思っていたのが何と、開所前に3台とも調達できたのだ。

 「送迎用の車に」と、ある女性から200万円が寄せられ、新車ワゴン購入に充てた。中古ワゴンは110万円で見つかった。そこへ8月初め、軽四輪車を譲りたいという高知市の男性(70)が現れたのだ。

 車は昨秋亡くなった妹さんの形見。走行距離2千キロで新車同然だ。身近な人がいなくなり自分独りに。処分をためらっていた時、山崎さんの活動を知る。高齢者介護施設で勤務し送迎体験もあっただけに、役立つはずと思ったのだ。

 山崎さんらは喜んだが、その後に驚きの話が待っていた。「施設購入費(1500万円)の足しにしてほしい」と妹さんの生命保険金の全額寄付を口にしたのだ。山崎さんと職員は、「ご自分の生活に使ってほしい」と固辞したが、男性は口座に振り込んだ。

 困った山崎さんはアドバイザーである名古屋の法人理事長に相談。取りあえず基金とし、「いっぽ」だけでなく、広がりある使い道を探そうとなった。

 11月上旬、男性に会った。表に出るのを拒んでいたが、山崎さんの「隠し事なく運営したい」との説得に、「匿名で額を出さなければ」と応じてくれたのだ。

 男性は介護職時代のこと、身近な所に障害者家庭があることを挙げ、「いっぽのような施設は絶対必要。つまずかれたら困るんです。社会のために役立てたいとかでなく、生きた金として必要なところへ使ってほしいだけ。山崎さんのようなことは誰彼できん。切り込み隊長として頑張ってほしいんです」と話した。

 5月から本格化した寄付(助成金含む)は、この大口寄付以外に1776万円に上る(22日現在)。高知市の年配女性が「20人ばあから集めたよ」と2万円を。以前にカンパをくれた親睦団体の代表は「また、集めたので」と3万円を届けてくれた。「パソコンを2台買って」と30万円くれた人。いの町の女性も「新聞読んでました」と涙ぐみ30万円を置いていくなど、善意の流れが止まらない。

 この現象の意味を高知県立大の田中きよむ教授(54)=社会保障論=に尋ねると、「山崎さんのプライバシーの全てをさらけ出した、リアルな生きざまの報道だったからこそ、人々に伝わったのでしょう。つらさやもがき、涙や喜びを包み隠さず発信した勇気。一直線上のサクセスストーリーでないところが人々のリアルな共感を呼び起こし、異常な募金につながったと思うんです」と熱く語り始めた。

高知のニュース 奇跡の笑顔

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