2017.11.30 08:00

奇跡の笑顔 全盲・重複障害を生きる(37)「もう、大変でした」

8月1日、壁も天井も取り払い、「いっぽ」誕生へ大改修が始まった(高知市朝倉南町)
8月1日、壁も天井も取り払い、「いっぽ」誕生へ大改修が始まった(高知市朝倉南町)
頭痛めた職員探し
 50件探しても見つからず難産だった重症児デイ施設「いっぽ」(高知市朝倉南町)の物件探し。だが、他にも9月開設へ向けてやるべき事は山積み。そのため、代表の山崎理恵さんは6月末で勤務先を退職、7月から立ち上げ作業に専従した。

 スタッフ探し、行政への申請書類の作成、協力病院の要請、利用者への重要事項説明の文案作り、物件決定後の契約や改修工事の打ち合わせ、福祉車両や物品の調達、関係者へのあいさつ、警備会社との契約、職員駐車場探しと、休む暇なし。疲れから歯茎が腫れたが治療にも行けなかった。

 その中で最も頭を痛めたのはスタッフ確保だった。営業する月―土曜の朝から夕方までの全時間、4職種の配置が必要。7月中に自らも含めて看護師3人、特別支援学校教員OGら計6人を確保。さらに、利用の多い土曜は重症心身障害児者施設「土佐希望の家」(南国市)の職員2人のパート応援も得たのだが、足りなかった。

 「もう、大変でした。保育士さんが全然いないんです。でも、見つかっても、また大変なんです。人件費だけで9割に。こんなの絶対、無理」とあきれていた。

 行き詰まりを救ってくれたのはアドバイザーの社会福祉法人「ふれ愛名古屋」、鈴木由夫理事長だった。厚生労働省令の配置基準の条文の中に、「看護師」は「保育士または児童指導員」の代わりができるという表現を見つけてくれて、問題は解決したのだ。「県の人も知らなかったみたい。とにかく助かりました」と山崎さん。

 その鈴木理事長からは何度も叱られた。例えば開業後の施設利用報酬の国保連合会への請求。市販の便利な請求ソフトがあるが、月額2万~3万円もかかる。契約しようとしたら理事長からストップがかかった。

 「収入が1億円規模ならまだしも、わずか5人の事業所ですよ。国保連の作った無料ソフトで大丈夫なんです。山崎さんの所は、皆さんから多くの浄財をいただいている。だから余計に、1円の重みを感じてもらわなければ。あの時はかなりきつく言いましたよ」と鈴木理事長。

 「いっぽ」を運営するNPO法人「みらい予想図」の監事でもあるだけに真剣。あれこれ厳しくチェックが入り、時に声も大きくなる。経営素人の山崎さんは、「もう、やめたいぐらい。音十愛(県立盲学校中学部1年)がいなかったら、とてもじゃない」と弱音を吐くほど追い込まれていた。

 シングルマザーだけに、仕事オンリーとはいかない。夜は家で、音十愛ちゃんの育児と介護がある。野球をやるため室戸高へ進学した長女が夏休みに帰省した時は、8月31日の仕事終了後、室戸まで車で送り、帰宅は午前1時半。翌朝は6時前に起きて盲学校へ送り出し、そのまま「いっぽ」お披露目の朝を迎えたのだった。

 その3日前も、建物の内壁に徹夜で絵を描いてくれる絵本画家と一緒に過ごし、睡眠は2時間弱。極度の寝不足続きだったが、「音十愛が夜中も泣いて眠れなかった頃に比べたら、今は短時間でも熟睡できるから」と乗り切ってしまった。

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