2015.09.10 19:20

「右傾化」に違和感  新右翼の鈴木邦男さんに聞く

鈴木邦男さん
鈴木邦男さん

戦争避ける取り決めが安保 

 安全保障関連法案に対して、いわゆる「右派」からも異論が出ている。新右翼として長く活動してきた「一水会」創設者の鈴木邦男さん(72)もその一人。近年の憲法改正の動きや社会の「右傾化」に違和感を覚えるという。

 ―「自由のない自主憲法より、自由のある押し付け憲法の方がいい」と発言されてますね。

 「押し付けは事実だし、批判も当然。今でも憲法を見直すべきだと思う。でも、それには今の憲法以上の夢と希望が必要。今の改憲の動きはただ戦前に戻ろうとしているようで、あれだけの犠牲を払った教訓を生かせていない。(自民党改憲草案にある)天皇を元首にするとか、天皇も迷惑でしょう」

 ―夢と希望?

 「(連合国軍総司令部=GHQ=民政局のスタッフとして)現憲法の起草に携わったベアテ・シロタ・ゴードンさんに何度か会いました。彼女は『米国でもできないような民主的条項を作ろうと思った』と。9条にしても、第2次世界大戦を最終の戦争にして、今後の日本は武器を持たず、米国を続かせたいという決意があったと思う」

 ■安全地帯で罵倒

 ―現政権下で改憲の動きが加速してます。

 「この道しかないと軍備を増強し、隣国を挑発して、反発が出たら『ほら見ろ』と。外に敵を求めて支持を固めるのは、右翼、左翼の“運動家”の論理。政党がそれをやるのは危ない。近隣国と仲良くして、何か起きても戦争だけは避ける取り決めを作ることこそ一番の安全保障です」

 ―ただ、今の安倍政権の路線を支持する層はあるし、社会の「右傾化」も言われる。

 「安全地帯のネット空間で好き勝手に差別用語を使って…。ひきょうですね。個人と国家を一体化させ、他国を罵倒するなんて愛国心じゃない。謙虚さこそ日本の心、保守です。敵を『観念』でつくるからこうなる。僕が学生のころは全共闘とよく殴り合った。でも敵ながら優秀なやつ、あっぱれなやつはいて、今も左翼と話ができる。『在日は出ていけ』とか言ってるやつって、闘ったことがあるのか」

 ―新右翼の立場からすれば、今の軍備増強には賛成では?

 「学生運動の仲間で安倍首相を支持する人は多い。『三島由紀夫の願いがやっと実現する』と。でも、三島が生きてたら今の憲法改正の動きには反対すると思う。『自衛隊が米国の傭兵(ようへい)になる』と訴えてたんだから」

 ■広がる虚構

 ―安保法案になぜ反対なのですか。

 「福沢諭吉は『一身独立して一国独立す』と言いました。今は個人が弱いから、国家が強い姿勢を出す。逆なんです。憲法のために一人一人が生きてるんじゃない。一人一人が豊かに暮らすために、為政者を縛るのが憲法です。子どもに愛国心を教えようなんて発想も論外ですね」

 ―愛国心って、何でしょう。

 「僕は日本が好きだし、歴史に誇りも持っている。でも、同時にどうしようもない失敗もしたと思う。それでも好きだというのが愛国心。今は『侵略も虐殺もない』『そんなことを言うやつは非国民』というフィクションが広がり、憎悪が純粋培養されて、書店には中国、韓国をばかにした本が並ぶ。歴史を見る勇気をなくし、劣化している」

 「中国には中国の、韓国には韓国の愛国心がある。それを認めるのが本当の愛国心。今春、ソウル大学に呼ばれて話をしてきたけど、向こうの書店に『反日本』は見つけられなかった。『そんなの誰も買いませんよ』って」

 ―著書で「僕は世界一の愛国者だ」と。

 「はい。その僕がネットで『売国奴』『左翼』と呼ばれる時代ですから」

 すずき・くにお 早稲田大学政経学部卒。学生時代から民族運動を始め、1972年に「一水会」創設。元顧問。一水会は2015年5月、右翼を自称しない独自活動宣言を出した。著書に「愛国者は信用できるか」(講談社)、「新右翼〈最終章〉」(彩流社)など。福島県出身。

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カテゴリー: 安保法制選挙・政治

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