2017.11.14 08:25

名古屋大名誉教授が高知で講演  「学問の軍事化」に警鐘

池内了さん 
池内了さん 
科学は誰のためのものか
 軍事分野の技術開発に大学などが協力する「軍学共同」に反対する宇宙物理学者、池内了(さとる)さん(72)=名古屋大学名誉教授=が11月11日、高知市で講演した。こうち九条の会など主催。軍事技術に応用可能な研究に費用を助成する防衛省の「安全保障技術研究推進制度」を「軍事研究の誘い」と批判。科学が戦争に加担した歴史を紹介し、「学問の軍事化」に警鐘を鳴らした。講演要旨を紹介する。


 科学者は、生活を便利にすると同時に戦争を悲惨なものにする役割も担ってきた。例えばアルキメデスは、てこの原理を武器に転用した。ガリレオは望遠鏡を軍に売り込んだ。

 第1次世界大戦には戦闘機が登場した。ライト兄弟が動力を載せた模型のような飛行機を飛ばしてからわずか11年後、戦闘機に「進化」した。第2次世界大戦ではミサイルや原爆が開発された。

 科学が戦争のために使われるということは、いかに効率よく人を殺すかということだ。

 科学者は可能性としてあらゆることを考え出すという悪い癖がある。その力を「善」に使うことが常に問われている。
 日本は明治維新以来、富国強兵で、科学者は疑いもなくこれに従事し軍事研究が盛んに行われた。

 終戦後、科学者は反省した。1949年に日本学術会議が発足し、軍事研究はしないと声明を出した。これは憲法の平和主義を科学・学術の分野でも徹底すべきだという決意であり、後の科学者にも大きな影響を与えた。

 学術の世界だけでなく、産業界も、生活や生産力を伸ばすための企業活動に集中した。日本全体がそういう方向で動いてきたことは誇るべき歴史だ。
 それがこの数年で崩れつつある。学術・学問が、戦争の道具として乗っ取られるという危険が迫りつつある。

 まず宇宙開発の軍事化の動きが加速している。上空から北朝鮮を細かく撮影し観察する「情報収集衛星」は現在5基動いている。

 東日本大震災で大津波が東北地方を襲った時、この衛星は上空からデータを取っていたはずだ。Jアラート(全国瞬時警報システム)を出すべきだったのにデータを一切出さなかった。2万人以上の人が亡くなっているにもかかわらず、だ。尖閣諸島で中国漁船が魚を取っている写真は閣議で出している。戦争状態と関連するようなデータは出すが、それ以外は出さない。

 私たちに知らされているのは「はやぶさ」のような科学研究のためのものだが、宇宙は平和のためだけに使われていると思うと危ない。

 安倍内閣は、科学を戦争のために使う準備を始めている。2015年に防衛省の「安全保障技術研究推進制度」ができた。防衛省が研究テーマを出し、活用できる技術に金を出して軍事研究をやらせようという制度だ。基礎研究とうたっているが、新しい武器に対するアイデア募集だ。

 まさに研究者に対する軍事研究への誘いだ。この動きに対し、学術会議は50年ぶりに声明を出し「戦争目的の研究には従事しない」と過去の声明を継承した。現在、30大学以上がこの制度に応募しないと打ち出している。

 制度が始まった2015年度に3億円だった予算は、17年度には110億円になった。17年度の応募数を見ると、大学からの応募は頭打ちになっているが、企業は圧倒的に増えている。普通の家電メーカーなどが軍事的な製品作りに踏み込もうとしている。

 防衛省から産業界へ資金が流れる状況がつくられている。一方で、産業界と研究者が共同研究する産学共同も盛んだ。そうすると「軍」(=防衛省)から「産」へ流れた資金が「学」へ流れる。産が軸になって「軍産学複合体」がつくられる可能性が高い。

 科学は何のための、誰の研究なのかをちゃんと考えるべきだ。今は分かれ道だ。

 科学の原点は憲法の精神だと思う。「学問の自由は、これを保障する」。学問の自由を通じて、私たちは軍事研究を拒否していく。

カテゴリー: 政治・経済


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