2017.11.13 08:00

【森林バンク構想】所有者の同意に手尽くせ

 戦後、全国の山々に大量に植えられながら、林業不況で手入れが途絶えたスギやヒノキの人工林。どう適切に管理し、有効活用していくか。模索が続く難題だ。
 林野庁が、民間の人工林を公的に管理する「森林バンク」制度の創設に乗り出す。市町村が仲介し、意欲と能力のある林業経営者に委託する仕組みだ。農地を集約して貸し出す農地中間管理機構(農地バンク)の林業版といえる。
 林業を地域の成長産業として再生するとともに、防災や地球温暖化防止など森林機能の保全を目指す。林業の衰退が山村をむしばんできた。地域に根付き、実効性のある制度設計を求めたい。
 国土面積の3分の2を占める森林のうち人工林は40%に及ぶ。その約半数が林齢50年以上の主伐期を迎えてきている。戦後復興や高度成長を支えるため山林が大量に切り出された後、さらに木材需要を見込んで植えられた。
 その林業政策は失敗し、安価な外材の大量輸入で国産材価格は下落、林業は長い不振に陥った。小規模零細が大半の森林所有者は植林の手入れや生産から離れていった。その半面で、人工林資源は豊富に蓄えられてきた。
 長く減り続けてきた国産材の供給量は2002年に最低に落ち込んだ後、伐期を迎えた人工林の供給が徐々に増加。国内自給率も02年の19%から16年は35%に上昇した。
 それでも人工林の年間成長量の6割余りが伐採されず、山にたまり続けている。森林所有者の管理意欲が低いままの一方、原木生産に積極的な林業経営者の多くは事業規模の拡大を望む。もどかしいミスマッチが起きている。
 そうした事情は、森林率84%の本県でも同様だろう。
 森林バンク構想は、人工林の管理を市町村が所有者から引き受け、林業経営者に貸与する。採算性が厳しい森林は市町村が直接管理し、森林組合などに間伐などを委託する。財源は政府が検討中の「森林環境税」を見込んでいる。
 山林を広く集約できれば、作業効率は上がる。海外に比べて割高な生産コストの低減が期待できる。林道・作業道整備や高性能機械導入への公的支援のほか、木材利用を広げるため、建築基準などの規制緩和も視野に入る。
 荒れた森林は豪雨などで土砂崩れや流木となって災害を引き起こす。相続手続きが取られず、地権者や境界が不明になった山は公共事業や山林集約化の支障になっている。公的管理では、森林の公益性に照らし、所有者の責務も問われよう。強制権を伴うケースも想定されるだけに、丁寧に検討すべきテーマだ。
 森林バンクは、山林の所有者や地域の理解と同意があってこそ成り立つ。制度への信頼を得るための十分な説明と周知を尽くさなければならない。仕組みづくりの過程から、その手だてが欠かせない。
カテゴリー: 社説


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