2017.10.20 08:35

「9条に自衛隊」どうなる 高知県内小選挙区候補の考え

戦闘での救助を想定した訓練を行う陸上自衛隊高知駐屯地所属の隊員ら(2015年9月、滋賀県高島市)
戦闘での救助を想定した訓練を行う陸上自衛隊高知駐屯地所属の隊員ら(2015年9月、滋賀県高島市)
 「自衛隊の存在を憲法に位置付けるべきだ」―。今年5月、安倍晋三首相(自民党総裁)は9条に自衛隊を明記する方針を打ち出し、自民党も衆院選の公約に盛り込んだ。自衛隊関係者は「隊員の誇りにつながる」と歓迎するが、自衛隊の任務拡大に懸念の声も漏れる。憲法学者は「集団的自衛権の行使が全面解禁されかねない」と警告を発しており、戦後日本の平和主義の土台となってきた9条は、憲法施行70年の節目に大きな岐路を迎えている。

 安倍首相が5月に示したのは、戦争放棄をうたう9条1項と戦力不保持を定めた2項を残した上で、自衛隊を明記する案。発表が唐突だった上、「国防軍創設」を掲げていた自民党改憲草案との整合性を問う声もあり、党内の意見集約はできていない。

 このため、衆院選での自民党の公約は1、2項を残すとはしておらず、自衛隊明記の必要性だけが訴えられている状況だ。

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 「自衛隊の存在を明記してもらうのはありがたい。隊員が国民から支持された組織だと実感できる」

 高知市春野町出身の元陸将で、防衛庁(現防衛省)の初代情報本部長などを務めた国見昌宏さん(75)=埼玉県=はそう歓迎する。一方で後輩隊員たちの身を案じ、「PKO(国連平和維持活動)の現状を考えると、自衛隊の役割を今以上に拡大させる改憲であってはならない」とも話す。

 隠蔽(いんぺい)問題に揺れた南スーダンPKOでの陸上自衛隊の日報には、「戦闘への巻き込まれに注意」「最悪のケースを想定」などの記述があり、自衛隊の宿営地の近くで起きた戦闘で隊員が危険にさらされていた状態が明らかになった。

 国見さんは、9条について「戦争や紛争に巻き込まれることを防ぎ、自衛隊の安全を守っていた」と評価し、「役割を拡大するのなら、隊員の安全や国会の審議を含め、慎重に慎重を重ねて議論してもらいたい」と注文を付けた。

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 2年前、衆院憲法審査会の参考人として、安全保障法制を「違憲」と断言して注目された長谷部恭男・早稲田大教授(60)は「集団的自衛権を9条に反するとしてきた歴代政府の解釈を変え、それまで合憲だった自衛隊を違憲の存在にしたのが安保法制だ」と指摘。

 その上で、9条への自衛隊の明記は、安保法制を「合憲」にするだけでなく、自衛隊が国民から離れていく転換点になると見る。

 「自衛隊は9条に書かれていないがゆえに、任務や役割を追加する度に根拠となる法整備を行ってきた。政府はその都度、9条の解釈や自衛隊に何ができて何ができないのかを国民に明確に説明を積み重ね、合意を得る責任があった」

 長谷部教授はそう解説した上で、9条に「自衛のための組織」として自衛隊が明記された場合に「集団的自衛権の行使が全面解禁されかない」とし、政府による憲法解釈の上書きに警鐘を鳴らす。

 「政府は『憲法に活動根拠が書かれている』と言い張れるようになり、国民に十分な説明をせずに自衛隊の任務を拡大させる流れになり得る。現政権が『役割は変えない』と言っても、後々の政権が新条文の解釈をどう広げ、運用していくか予測ができない」

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 衆院選の公示後に高知新聞社などが行った県民世論調査では、憲法改正自体を容認する県民が半数を超えた。しかし、改正内容にあいまいさを残したまま、安倍首相の私案が改憲議論をリードする状況を危険視する声も上がる。

 民主政治を研究する杉田敦・法政大教授(58)は、憲法を「権力の暴走を抑えるための、最後に残ったブレーキ」と表現し、こう指摘した。

 「国民の大多数が求めていないのに、政府の長が率先して改憲論議を進めるのは国民主権に反する。憲法改正は、国論が二分するような状態で行うべきものではない」



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