2017.10.18 08:25

[2017衆院選]原発政策が争点で埋没 公約「原発ゼロ」工程なし

 東京電力福島第1原発事故から6年7カ月を経て迎えた今回の衆院選では、自民党が原発を維持する方針を示すのに対し、野党の多くが「原発ゼロ」を公約に掲げて対立軸を示している。だが、選挙戦では経済政策や安全保障、消費税などが論戦の中心となり、与野党とも言及が乏しい原発政策は争点の中で埋没している。

 安倍政権はこれまで一貫して原発再稼働を進める方針を示し、四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)など3原発の計5基が再稼働した。

 一方、福島事故の処理の道筋は険しく、国民が抱える原発への不安も根強い。原発ゼロを前面に打ち出す野党にも具体的な工程表まで示した政党はなく、伊方原発からそう遠くない高知県内の有権者からも「本気さが感じられない」といった声が聞かれる。

 龍谷大学の大島堅一教授(環境経済学)は「維持するなら維持するための政策が必要になるし、無くすのであれば工程も考えなければならない。今後の原子力をどうすべきかについて、もっと争点化されるべきだ」と指摘している。


原発論戦 高知県内でも低調 有権者に不満の声

 原発政策を巡る衆院選の論戦は、高知県内でも低調だ。2選挙区の5候補が街頭や個人演説会で訴えているのは、社会保障、安全保障、憲法、地域の活性化、そして対立陣営の批判が中心。配布するビラに「原発ゼロ」と記す候補もいるが、積極的な言及はほとんど聞かれない。

 共産、立憲民主、社民の3党は脱原発を前面に打ち出し、再稼働にも反対する。希望の党は「2030年までに原発ゼロを目指す」と目標年限を掲げて注目を浴びたが、再稼働を認める考えも示し、具体的な工程はこれから検討するという。

 こうした公約に対し、脱原発を望む県内有権者には冷めた見方がある。

 東京電力福島第1原発事故を機に関東から香美市に移住した自営業の男性(38)は「ゼロにする具体的なプランが見えず、説得力がない。30年という目標も関心を引くために言っているだけじゃないか」と指摘する。

 土佐市の団体職員の女性(52)も「ゼロと言うのは簡単だけど、その後どうなるのか示していない。政治家も国民も、本当に原発をなくす覚悟ができていないと思う」。

 昨年8月に再稼働した四国電力伊方原発3号機(現在は定期検査で運転停止中)への不安の声も。高岡郡越知町の農業の男性(54)は「高知県も風向きによって影響を受ける。もう少しわが事のように考え、主張してくれる候補者がいてもいい」と話した。

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 自民党は公約で、原発をエネルギー需給の安定に寄与するベースロード(基幹)電源とし、再稼働を進める方針を明示。安倍政権は30年度の電源構成比率に関し、東日本大震災前には3割近かった原発の割合を20~22%にする目標を掲げる。

 ただ、この目標達成には停止中の原発の再稼働、老朽原発の運転期間延長に加え、原発の新設、増設が必要だという意見が政府や電力業界内などに根強くあり、原発の活用を推す経済界からは注文の声が上がっている。

 四国の経済4団体で構成する「明日の地域づくりを考える四国会議」は、今年9月にまとめた政府への提言で「原発のリプレース(建て替え)・新増設に係る方針の明確化」を明記。事務局の四国経済連合会は「将来にわたって利活用する裏付けを示してほしい」としている。

 県内の自民党候補の演説では、脱原発はもちろん、新増設に関する発言も聞かれず、同党を支持する安芸郡芸西村の男性(54)は「東日本大震災から時間がたつにつれて危機感が薄れていると感じる。原発に頼らないエネルギーの確保を踏み込んで考えてほしい」と不満を口にする。

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 原発を巡る課題は、核燃料サイクルの是非、高レベル放射性廃棄物の処分問題など多岐にわたる。

 龍谷大学の大島堅一教授(環境経済学)は「原発を維持するならば、新設も含めて考えなければならず、国の強い関与が必要になる。その話を選挙で出さないのは無責任だ。一方で、原発をなくすには、地元や経済界の説得が必要。そうした工程もはっきり分からないのがもどかしい」と言及。

 さらに森友、加計学園問題を引き合いに、こう指摘した。

 「高レベル放射性廃棄物の問題は超長期にわたり、行政情報へアクセスしやすいことが必要だ。不都合な情報が消えたり、記憶がなくなるような行政が原子力を将来やっていけるのか。そういった点も争点として考えられる」



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