2017.10.16 08:25

[2017衆院選] 高知県の農業は輸出で稼げる? ユズ以外低調

輸出に向けてユズ玉を仕分けるスタッフ(2015年11月、北川村木積)
輸出に向けてユズ玉を仕分けるスタッフ(2015年11月、北川村木積)
 政府は環太平洋連携協定(TPP)の交渉参加を表明した2013年以降、市場開放に対する農家の懸念を打ち消すため「攻めの農業」を強調し、農産品の輸出拡大を推進してきた。高知県ではユズが成果を上げているものの、輸出のハードルの高さを指摘する声も多い。県内農家の所得アップへ、輸出は現実味のある手法といえるのか。

 政府は海外の日本食ブームも追い風に、2019年までに農林水産物・食品の輸出額を1兆円に伸ばす目標を設定。2016年は7503億円となり、4年連続で過去最高を更新した。

 高知県では近年、県産業振興計画で輸出支援を強化。2016年の食料品輸出額(加工品を含む)は過去最高の7億2100万円を記録し、13年の3倍近くに増えている。

 高知県内で輸出をけん引するのはユズだ。

 豊作時の在庫対策として、加工会社「北川村ゆず王国」(安芸郡北川村)が7年前から輸出をスタート。欧州の人の口に合い、販売ルートを築いた。他の事業者も追随し、10年に2600万円だった高知県のユズ果汁・玉の輸出額は、16年に1億7900万円まで伸びている。

 同社の輸出先はフランス、スペイン、インドなど32カ国。輸送費を単価に上乗せして利益を国内同様に確保できているといい、加藤忍取締役は「フランスでは北川村が『ユズキング』と呼ばれ、ブランド化された。おかげで国内の大手量販店からの引き合いも増えている」と話す。

 国内外の需要増を受け、規模拡大に着手する農家も登場。北川村は今年、大規模農園の整備を決めた。

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 とはいえ、ユズ以外の輸出はまだ低調だ。農産物に限れば、輸出実績はグロリオサが約1千万円。他の取引は1件100万円にも満たない。背景には、工業製品のようにはいかない難しさがある。

 生鮮食品は日持ちする品目が限られる上、検疫などのハードルもある。中国は検疫上の理由で大半の品目が門前払い。フランスには厳しい農薬基準があり、北川村のユズも対応に苦心した。

 これらをクリアしたとしても、価格競争が待ち受ける。高知県地産地消・外商課によると、例えばタイにナシを輸出した場合は「韓国産が日本産のほぼ半値で流通している。見た目もほぼ同じで、差別化が難しい」。

 香港やシンガポールに輸出される県内産のイチゴやメロンもあるが、組織的に輸出に取り組む日本国内の他産地があり、厳しい競争にさらされる。

 「輸出でもうけるには、なかなかね…」。高岡郡佐川町黒岩地区の新高ナシ農家、西村清勇さん(70)が苦笑いを浮かべる。

 地元の「黒岩梨出荷組合」(23戸)では、県や国の事業を活用して2008年から輸出に挑戦してきた。だが、量は年間100~400キロと少量にとどまり、不作で見送った年もある。

 その上、輸出は国内出荷よりも薄利。それでも細々と続けるのは「輸出で稼ぐというより、黒岩のブランド化につながるからだ」という。

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 高知県はユズの成功を他の品目にも広げたい考えで、産振計画の柱に「輸出促進」を追加。高知県園芸連とともに2016年度から需要開拓に取り組み、海外の飲食店や量販店で高知県フェアを開いている。

 ターゲットは、検疫のハードルが比較的低い台湾、香港、シンガポールなど。同課によると、山北ミカン、ミョウガが好評を得たといい、山北ミカンについては、産地と協力して取り組みを具体化させる考えだ。

 園芸連の弘田憲一会長は「国内の食料自給率は38%(カロリーベース)しかなく、私たちの主戦場は国内」としながらも、「海外で評価されたら農家のやる気にもつながる。可能性の高い品目も分かってきたので、戦略的に取り組んでいく価値はある」と話している。



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