2017.10.12 11:00

【71回県展 審査評】日本画 審査員・土屋礼一

 高知県内最大規模の公募展「第71回県展」(高知新聞社、RKC高知放送主催)が22日まで高知市高須の県立美術館と同市九反田の市文化プラザ「かるぽーと」で開かれている。

 洋画、日本画、彫刻、工芸、書道、写真、グラフィックデザイン、先端美術の8部門。入賞入選と審査員、無鑑査、推薦作家の1218点が両会場を秋色に染めている。

 ことしは写真部門の入交貞悦さん、書道部門の中岡祥舟さんが無鑑査作家入りを果たした。同部門の無鑑査誕生は11年ぶり。初特選は13人で22歳の新鋭から84歳のベテランまでがそろい、幅広い年代が競い合う県展を裏付けた。

 8部門9人の審査員は各自の判断基準で厳しく作品を吟味した。審査評を紹介する。


県美術振興会奨励賞「白い花の窓辺」・井上由美(高知市)
県美術振興会奨励賞「白い花の窓辺」・井上由美(高知市)
根拠のある自分の絵を

 それぞれの人生の中で絵を描く喜びに出合い、じっくりと自分の心に向き合っている人の多さを感じた。賞の線引きは難しく、審査は大いに悩んだ。

 賞に漏れた作品の中にも、かなり意欲的に自分の世界を描いているものがあった。太平洋に面している高知という地域性が出ていた。

 特選の高岡真由子「明日へ」は、「夕日がなんてきれいなんだろう」という表面的なものではなく、これまで彼女が見てきた夕日と人生の深さがしみじみと伝わってきた。全体は暖色系だけど、よく見ると雲の隙間に寒色の青がちらりとのぞいている。この青色が全体をうまくきゅっと締めている。

 褒状は5点。竹村初江の「遺(のこ)された地」は発想がいい。地面の上に3足の靴が描かれ、「何だろう?」と見る人に考えさせる。この絵を描いた人に会ってみたいと思わせる。

 中尾泰斗の「桜散らし」は傘を手にした女性が歩いているのか、雑踏にいるのか…。過去でも未来でもない、リアリティーが伝わってくる。

 松井芳美の「残心」は花や三輪車に赤色をリズムとして使い、自然の音楽が聞こえてくるようだ。モチーフがしっかりしており、赤色に対する思い出があるのでは―と想像させる。

 八木真理子の「どこからきてどこへ」は有刺鉄線や煙突などといった分かりやすいものと、宇宙船のような未来感のあるものを組み合わせて描いている。メタリックな色使いがとても知的でこの絵の魅力になっている。

 県美術振興会奨励賞も受賞した井上由美の「白い花の窓辺」もいい。手前のテーブルに置かれた白い花と窓の外にある白い花との関係性やテーブルに着いている人が自画像なのか、第三者なのか分からない。その分からなさに人は引き込まれる。この絵を描こうと思った根拠がうまく表現できている。

 新人賞の岩貞侑佳の「瞼(まぶた)を伏せる」は色使いが初々しい。若い人ならではの感性がストレートに出ている。

 絵は色と形とタッチという絵画的魅力があることに加え、自分がどうしてこの絵を描こうと思ったかという根拠がないといけない。根拠がなく、自分がない絵はつまらない。

 例えば白い花が咲いていて「何だろう?」とそばに近寄っていく。ユリだと分かるとそれまで引き付けられていた引力が急に弱まる。その時にユリの絵を描くのではなく、初めに何だろうと感じたことを描かないといけない。

 日本画の絵の具は、視覚的再現ではなく、描く人の感じ方を再現できるものだ。絵の具の力をよりうまく使い、絵の具に“助けられ上手”になってほしい。そうすると絵がふっと生きてくる。(談)

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カテゴリー: 文化・芸能県展文化


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