2017.09.23 08:25

交錯 果てなき野望 高知県須崎市「ご当地キャラまつり」に密着

県内外のキャラクターが大集合した「第4回ご当地キャラまつり」(須崎市桐間南)
県内外のキャラクターが大集合した「第4回ご当地キャラまつり」(須崎市桐間南)
 ひこにゃん、くまモン、ふなっしー、しんじょう君…。“ゆるキャラブーム”以降、全国でさまざまな人気キャラクターが誕生した。ブームが落ち着いたとはいえ、現在も自治体や企業のキャラが乱立。須崎市で9月9、10日に開かれた「第4回ご当地キャラまつり」には約120体が集まり、約9万5千人を動員した。熱狂に包まれた2日間、ゆるキャラたちが描く果てなき野望に迫ってみた。

 9日午前8時半、四国最大規模のゆるキャライベントの開始30分前。会場内の物販ブースでスタッフが慌ただしく準備をする中、入り口には長蛇の列ができていた。

 先頭に居座る女性4人のグループ。50代女性が「昨日の夜から並んでます」。徹夜のお目当てはふなっしーのステージを間近で見ること。東京、神奈川、愛知と住所はばらばらで、各地のイベントで顔を合わせるうちに仲良くなった「梨友」らしい。

 8時40分の開場とともに、並んでいた人が続々とステージ前に陣取った。ほとんどが黄色いタオルやシャツを身に着けた梨友。ふなっしー人気は陰りなし。

 ★チャレンジャー
 午前9時、ステージ上に所狭しとゆるキャラが登場。オープニングの後、早速会場に散らばった。愛媛県のみきゃんや栃木県のさのまるといった人気キャラに人だかりができる傍ら、見慣れないけどひときわ目立つキャラがいた。

「高知の人は温かかった」と満足げな東京・錦糸町のきんぼり~(須崎市桐間南)
「高知の人は温かかった」と満足げな東京・錦糸町のきんぼり~(須崎市桐間南)
 2メートルを超える大きなずうたいにサングラスをかけた中年男性風のきんぼり~。東京・錦糸町の情報サイト運営会社が昨年末に作ったばかりで、今回が初のイベント出張だという。

 人が多いしんじょう君の物販ブース近くに位置取り、陽気に手を振る。「このキャラ、面白くない?」と若い女性2人組が近づいてきたが「あ、ふなっしー撮りに行こう」とすぐに離れていった。そううまくはいかない。

 「最初に出張するのはビッグネームがそろうしんじょう君のイベントだと決めていた」と話すのは運営会社の前田貴志さん(44)。大人の背丈ほどのキャラが多い中、きんぼり~は頭一つ抜き出ている。これも乱世を生き抜くための秘策かと思いきや「中に入っているやつがでかいんで」。

 「後発組のうちはチャレンジャー。どんどんアタックしていかないと」と前田さんの言うとおり、きんぼり~は一般客に交じって他のゆるキャラとの記念撮影の列に並ぶなど、変化球気味のアタックも織り交ぜた。

 ★順位は二の次
やくみつるさんに切実な悩みを相談するも、最後は「須崎、最高!」と跳びはねて帰ったふなっしー(須崎市桐間南)
やくみつるさんに切実な悩みを相談するも、最後は「須崎、最高!」と跳びはねて帰ったふなっしー(須崎市桐間南)
 午後1時半、この日一番の人だかりができ、満を持してふなっしーが登場。最前列の梨友たちは、ステージを飛び降りて暴れ回るふなっしーとハイタッチを交わし、歓喜の渦に包まれた。

 一方、がらんとなった物販ブース。手持ちぶさたな参加キャラだが、実は現在、投票受付中の「ゆるキャラグランプリ(GP)2017」で上位につけるブレーク予備軍もいる。

「杜(もり)の妖精」をイメージした岡山県真庭市のまにぞう(須崎市桐間南)
「杜(もり)の妖精」をイメージした岡山県真庭市のまにぞう(須崎市桐間南)
 岡山県真庭市のまにぞうは、680体がエントリーするGPの「ご当地ランキング」部門で岡山県トップの20位。「すごいなと思いますけど、まだまだふなっしーとは桁違い」と同市職員の嶋田有一郎さん(35)が謙遜する。自らもキャラと同じ緑の全身タイツ姿で、市のパンフレットを配る。

 須崎市と観光協定を結んだ縁で毎年参加しており、「来るたびにカルチャーショックですよ。他のキャラを勉強しないと」。GP1位よりも「まずは市民に愛されるキャラに」と順位にはこだわらない様子だ。

 中間発表でご当地部門10位に入ったなーしくんの地元、愛媛県愛南町の職員は「大健闘しているけど1位はとても…。しんじょう君はすごいですよ」。昨年のGPで総合1位となった同じニホンカワウソのスターを遠巻きに眺めた。

 実は昨年のGP上位10体中、今年もGPに出場しているのは2体だけ。昨年4位だった栃木県栃木市のとち介も今年は辞退した。GP参戦中は県内でのPRに労力を注いだといい「これからは県外イベントの参加を増やしたい」と市の担当者。上位に入ったことで認知度向上の目的は一定達成したという。

 何が何でも1位を狙うキャラは減ってしまったのだろうか。「この状況はチャンス」と息巻くのは2年前に誕生した広島県三原市のやっさだるマン陣営。新参組だが、記憶に残るようにとあえてかわいさを排除する戦略で「ゆくゆくは1位を」と闘志をたぎらせる。

 午後3時、新旧勢力が火花を散らした1日目が終了した。

 ★トーク、踊り、歌
自分の顔を取り外すことができるちょうせい豆乳くん(須崎市桐間南)
自分の顔を取り外すことができるちょうせい豆乳くん(須崎市桐間南)
 10日午前9時。朝からサブステージが盛り上がっていた。中でも目立ったのがちょうせい豆乳くん(東京・秋葉原)やゴーヤ先生(京都府福知山市)といった自らしゃべるキャラ。ふなっしー人気が爆発して以降、トークが持ち味のキャラも増えている。

 しゃべるゆえに本音も聞こえる。個人で活動するちょうせい豆乳くんはサブステージで「引き際考えてないの?」と聞かれ、「本当に悩むところ。自分は2代目だけど3代目に引き継ぐタイミングはいつかなってずっと悩んでる」と吐露した。

 キレキレのダンスが得意なキャラや、持ち歌を披露するキャラ。今やステージパフォーマンスで一芸を持っていないと目立つことはできない。かわいい顔して歩いていればいいほど、ゆるくない世界だけに悩みは尽きない。

 ★やめたい…
 午前11時、今回の目玉企画「やくみつるさんのご当地キャラお悩み相談室」が始まった。最初の相談者はふなっしー。

 やくさんに「悩みなさそうだよね」と言われ、「あんまりリアルな悩みだとお客さん引いちゃう」と口ごもるふなっしー。「天候に左右される」と当たり障りのない相談をしていたが、仕事の過密さを心配されると「やめどきを見失っているなっしー! すぐにでもやめたい」とぽろり。人気者ゆえの苦悩がブシャっとこぼれた。

 他のキャラも「人気になりたい」「(キャラ自ら)しゃべろうか迷っている」と真剣相談。やくさんは「100のキャラがいれば、100の悩みがあるんだね」。

 午後1時。イベントも終盤。あるブースに人の輪ができていた。「今から一発ギャグやります!」。ちょうせい豆乳くんの声だ。胴体に張っている自分の顔を外して手にし「円盤投げ!」。クスクスと笑いが起き、グッズを買う人も。応援してくれる人がいる限り、やめられそうにない。

 ★海外展開
 午後3時すぎ、ステージ上に集合したキャラが別れを告げ、イベントの幕が閉じた。2日間、サブステージでMCを務めた「たけちゃん」こと埼玉県羽生市観光協会の白川剛司さん(48)に聞いてみた。ゆるキャラ界の現状、どう見てますか?

 「今は安定期になっています。踊ったり、しゃべったり、楽器を弾いたり、自分の街やしょってるものをPRするために個性を出していく時代。これからは海外に展開していく流れになるんじゃないでしょうか」

 ゆるキャラたちの次なる野望は世界へ―。とはいえ、2日間で見えたのは、あくまでゆるーく楽しむキャラやファンの姿。人気の格差はあるけれど、キャラ同士はライバルというより仲良し。あちこちでキャラの交流があり、ファンはそれを楽しんだ。それぞれ悩みも抱えるけど、大勢の人を笑顔にする力がある。ゆるキャラ熱はまださめそうにない。

カテゴリー: 社会高知中央


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