2017.09.21 08:00

【自民党改憲議論】「反省」ない日程ありきだ

 安倍自民党は「謙虚」になるのではなかったか。あまりに性急、拙速と言うほかない。
 自民党が再開した憲法改正議論で、党内の9条改正案のたたき台を10月にも提案する方向が示された。9条改正は次期衆院選の公約にも盛り込まれるとされる。
 党総裁の安倍首相がことし5月に突然、「改正憲法2020年施行」などの独自案を表明し、改正議論を急がせた。だが、加計(かけ)学園問題などで国民の不信を招き、内閣支持率が急落すると一転、「スケジュールありきではない」と日程に固執しない方向に改めたはずだった。
 「反省」はどこへ行ったのか。
 安倍首相の指示を受け、自民党は9条改正や緊急事態条項など4項目を中心に議論を加速させた。その中でも9条改正を優先し、戦争放棄の1項、戦力不保持などの2項を堅持しつつ、自衛隊を明記する―との首相案を軸に据えた。
 しかし、2項を見直し、自衛隊を「国防軍」とする12年党改憲草案とは隔たりがある。党内には首相案への賛成が多い半面、石破茂元幹事長ら草案支持派の反対が根強い。意見の集約は難しく、党内合意は見通せないのが実情だ。
 連立政権を組む公明党も特に9条改正では自民党と距離を置く。公明党の山口那津男代表は9条改正は早計だと明言し、前のめりの自民党を強くけん制する。政権内でもまとまっていない。
 改憲手続きは、国民の意見を幅広くくみ上げながら、与野党で丹念に議論を積み上げ、総意形成に努める作業だ。その場は国会である。一政党が「数の力」を振るって主導権を握り、特定の方向付けをしていく議論であってはならない。
 まして、同じ党内ですら意見がまとまらない段階で、国会への改正案提示のスケジュールを決めていく。そんな自民党の姿勢は「1強」のおごりの表れであろう。戦後の平和主義を根本的に変質させかねない9条の議論ならばなおさら厳格、真摯(しんし)であるべきだ。
 「共謀罪」法の強引な国会審議などへの国民批判の高まりに押され、安倍首相は改憲にも低姿勢を見せ、党内議論もトーンダウンした。ところが、支持率が持ち直し、北朝鮮の核・ミサイル問題で国民に不安が広がると、たちまち9条改正へアクセルを踏み込む。あまりに露骨で、民意を軽んじていないか。
 改憲勢力が衆参両院で3分の2以上のうちに駆け込もうとしているのなら、それは憲法そのものを踏みにじる。東京五輪・パラリンピックの20年を改憲日程とする首相のスケジュール感に国民は納得できるだろうか。
 安心して暮らせる社会保障制度の構築や格差是正、地域再生などこそ国民が求める優先課題である。その解決策も十分示せないまま、政治権力によって改憲議論を強引に進めることは許されない。厳に慎むよう求める。

カテゴリー: 社説


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