2017.09.19 08:10

共助の地図 障害者と考える震災ハザード(13)高知県立大大学院 神原准教授に聞く 日常の対話こそ重要

「弱い人に優しい文化は、みんなを守れる文化だという観点が必要」と話す神原咲子さん(高知市池の高知県立大学)
「弱い人に優しい文化は、みんなを守れる文化だという観点が必要」と話す神原咲子さん(高知市池の高知県立大学)

 「生き延びる」を意味する古い土佐の言葉を用い、本社が16年に始めた防災プロジェクト「いのぐ」。その一つとして、障害のある人や家族、支援者の「いのぐ」を考えます。

 高知県に暮らす身体、知的、精神の障害者手帳を持っている人は約5万5千人(16年度末)。私たち記者もまず、彼、彼女たちの言葉、言葉にならない思いをみつめることにしました。

  ■□■

 障害者が震災を「いのぐ」道のりは、まだ険しい。命を守るには、支援が進むには―。災害時の被災者ケアや減災に向けた地域づくりに取り組む、高知県立大学大学院准教授の神原咲子さん(40)に話を聞いた。

  ■□■

 「逃げられない」「迷惑を掛けるから」。取材に対し、避難行動や避難所生活への「諦め」を口にする人は少なくなかった。

 「他の人よりケアがあるということで、『あの人ばかり…』と思われることに障害者は負い目を感じている。手助けがないと生きていけないなら、ケアしてもらうのは当然なのに」

 「健康な人も(災害から)逃げる途中に脚を折れば障害者。その時、助けられる気持ちが分かっても遅い。お年寄りや子ども連れを『障害者』と言わないだけで、助けてもらわなければならない理由は誰しもにある。自分はいつ、どういう部分で助けられることになるか理解しながら、お互いを補い合うことが大事だ」

 「諦め」の理由はもう一つ、「物理的に逃げる方法がないからでは」とも。

 「障害者だけでなく、(南海トラフ地震の)被害想定が出て、諦めるしかないという高齢者は多かった。でも津波避難タワーができ、『これなら助かるかも』と思ったことで、備えへのモチベーションも上がった。障害者は健康や買い物など日頃の生活での困り事が多い。震災以前の問題をこつこつやっているのに、さらにハードルの高い地震対策をと言われても考えられる段階にないのでは」

 「障害者」と一言でくくられがちだが、障害の種別や程度によって、困り事はさまざま。当事者が必要としている支援と、用意されたマニュアルや制度がかみ合わないこともある。

 「そもそもどんなことに困っているのか、共通理解をしていない。地域の(人間関係の)希薄化で、他人を知る機会が減っている弊害もあるかも」

 全ての障害者に、付きっきりで専門的な支援が必要なわけではない。段差の前に車いすの人がいれば、車いすを押す。放送で流れた情報を、聴覚障害のある人に文字で伝える。本当は、ちょっとした行動であることも多い。

 「足りないところに柔軟に手を貸すことができれば、補完できる。それは障害者が他の人を助けることにもつながると思う」

 「大切なのはコミュニケーションと、相手を思いやる気持ち。それは防災対策ではなくて、日頃の地域の文化だと思う。この人に何が必要なのか、見て聞いて、コミュニケーションを取って解決策を見いだす力が必要。それは公助でも、制度でもない」

  ■□■

 まずは何から始めれば良いのだろうか。

 「防災訓練などで互いを理解し合うと、『これって結局、日常から必要なことだね』と気付く。高知は防災への関心が高い。防災から日常のコミュニケーションを考え直す、いい循環になればと思う」

関連記事

もっと見る



ページトップへ