2017.09.13 08:15

共助の地図 障害者と考える震災ハザード(8)発達障害 避難所、考えてもいない

 「生き延びる」を意味する古い土佐の言葉を用い、本社が16年に始めた防災プロジェクト「いのぐ」。その一つとして、障害のある人や家族、支援者の「いのぐ」を考えます。

 高知県に暮らす身体、知的、精神の障害者手帳を持っている人は約5万5千人(16年度末)。私たち記者もまず、彼、彼女たちの言葉、言葉にならない思いをみつめることにしました。

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たっちゃんが愛用する自転車。事業所までの10分間は一人の時間だ (高知市内)
たっちゃんが愛用する自転車。事業所までの10分間は一人の時間だ (高知市内)

 映画や本が好きな「たっちゃん」は、高知市で暮らす26歳の男性。知的障害を伴う自閉症スペクトラムがある。

 平日は障害福祉サービスの事業所に通い、道路清掃などに汗を流す。通勤は自転車で10分だが、母親で県自閉症協会会長の平野三代子さん(62)は、そんな時間を恐れ、祈っている。「たっちゃん一人のときに地震が来ませんように」

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 自閉症スペクトラムは発達障害の一つ。こだわりが強い、コミュニケーションが苦手などの特性は人によって異なる。

 「息子は多動で、独り言の声が大きい。『気になる』などNGワードがあって、こっちがうっかり言うと、『気になってないです』と繰り返します」

 たっちゃんは特別支援学校の高等部を卒業後、親元で暮らすことを選んだ。自転車通勤には、「一人でできることを増やしてあげたい」という家族の思いも込められている。

 そうした自立が震災時、「いのぐ」ことの妨げとなるかもしれない。

 「自閉症の人は置かれた状況や危険を理解しにくい。地震や津波の映像を見て避難訓練もしゆうけど、実際に揺れたときに『地震だ』と分からないかもしれない」

 「『一人のときはどこへ逃げる?』と聞くと、『小学校の体育館』と答えます。でも、どこまで分かっちゅうのか…」

 コミュニケーションが苦手なため、自ら「助けて」と言うことも難しい。

 「自転車の鍵をなくしたら、家まで引きずって帰る子。『困っていたら教えて』と言われても、自分が困っているということすら分からない。地震後は家族が見つけん限り、どこにいるか分からんでしょう」

 被災後は自宅で過ごす予定。自宅が駄目なら車で。避難所に行くことは「考えてもいない」。

 「聴覚過敏があり、ざわざわした避難所にはまず入れない。入れたとしても、大勢の中では落ち着いて過ごせない。大きい声を出すし、気になったら人の物でもぱっと取る。皆さんに迷惑を掛けることは目に見えています」

 「『すみません』と謝りながら26年間生きてきました。親としてはもう慣れたけど、震災という非常時には耐えれんと思います」

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 発達障害の子どもを育てる保護者のほとんどが、在宅避難を考える。裏を返せば、避難所に来る人は本当に居場所がない、ということ。なのに過去の震災では「迷惑」を理由に、避難所を出た、出された事例が相次いだ。

 日本自閉症協会は防災ハンドブックをネットで公開。「大丈夫だよと声をかけ、安全な場所に移動させる」「避難所ではパーテーションを」といった、自閉症の人との関わり方を紹介している。

 三代子さんも訴える。

 「最低限の理解と配慮でいいんです。どうか排除だけはしないでください」

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カテゴリー: 社会いのぐ災害・防災


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