2017.09.12 08:30

共助の地図 障害者と考える震災ハザード(7)学校  大人不在時の発生危惧

 「生き延びる」を意味する古い土佐の言葉を用い、本社が16年に始めた防災プロジェクト「いのぐ」。その一つとして、障害のある人や家族、支援者の「いのぐ」を考えます。

 高知県に暮らす身体、知的、精神の障害者手帳を持っている人は約5万5千人(16年度末)。私たち記者もまず、彼、彼女たちの言葉、言葉にならない思いをみつめることにしました。

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大音量で流れる緊急地震速報や揺れの音。苦痛で耳をふさぐ子もいるが、本番さながらの訓練を願う保護者は少なくない(高知市の市立高知特別支援学校)
大音量で流れる緊急地震速報や揺れの音。苦痛で耳をふさぐ子もいるが、本番さながらの訓練を願う保護者は少なくない(高知市の市立高知特別支援学校)
 チャンラーン、チャンラーン、緊急地震速報―。やがて揺れ、物が落ちるような音も校内放送のスピーカーから鳴り始めた。大声ぐらいのボリュームで。

 9月1日、防災の日。高知市本宮町の市立高知特別支援学校でも地震の避難訓練が行われた。

 「当たり前のことしか、してませんので」。取材を申し込むと、清水隆人校長(53)は何度も恐縮した。が、知的障害のある小中高校生151人が在籍する同校の「当たり前」は、他の学校とは異なる。

 動かずじっとしていることが多い子。大きな音を極度におびえる子。そんな子たちの手を引き、肩を抱き、机の下へ。もぐり込めずその場で動けなくなった子には、覆いかぶさり声を掛けた。「大丈夫やきね」。“揺れが収まる”と「よう頑張ったね」。

 非常時も個別支援を、温かい言葉を忘れていない。

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 「訓練の日は朝から不安を訴える子もいました。大きな音が苦痛という子も。大音量での放送などは『嫌な思いをさせるのでは』と悩みました」と清水校長。

 「でもPTAの役員さんらから言われました。『嫌な思いをするけれども、実際起きればそうなるんでしょう?』と」

 背中を押され、本番さながらの訓練に踏み切った。

 「知的障害の子は『例えば』という話やフィクションが苦手。訓練を実際の場面で応用できるかというと、難しい。中学部では『防災合宿をしよう』という学習もやってますが…」

 「昨年、緊急地震速報が鳴った。誤報だったんですけど。その時、各担任から『ちゃんと机の下にもぐった』『訓練や学習は無意味ではなかった』と報告がありました。初めは訓練に強い不安を訴えていた子も、慣れてきた。経験は大事だなと思いました」

 一点、心配がある。「よく知っている大人が不在の場面」「自分で登下校している子もおり、その間に発生したら…。周りに助けを求められるといいですが」

 大人不在時への危惧。清水校長だけではない。

 「学校から帰宅した時、地域社会の一員になっているか」(高知市内の小学校の特別支援学級担任)

 「特に心配なのが、普段は特別支援学校の寄宿舎で暮らしている子が帰宅している時」(県内の特別支援学校教員)

 2017年度、本県の支援学校(分校含む)は16校。支援学級のある公立小中学校・義務教育学校は253校。それらに約2500人が在籍している。公立小中高校に通う発達障害の診断・判断がある子やその可能性がある子も、16年度は約4700人いた。

 震災による家族の死去。地元での孤立。そんな時、彼、彼女たちは―。

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 14年、県が支援学校の保護者に行ったアンケート。今後必要な支援を問うと、「地域住民の理解や支え合う仕組みづくり」を求める声は半数に上った。

 「校区や子どもたちの地元での啓発を、もっと進めなければ」。多くの教育関係者の決意である。

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カテゴリー: 社会いのぐ災害・防災


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