2017.09.10 08:20

共助の地図 障害者と考える震災ハザード(6)精神障害 自分の病、話せない

 「生き延びる」を意味する古い土佐の言葉を用い、本社が16年に始めた防災プロジェクト「いのぐ」。その一つとして、障害のある人や家族、支援者の「いのぐ」を考えます。

 高知県に暮らす身体、知的、精神の障害者手帳を持っている人は約5万5千人(16年度末)。私たち記者もまず、彼、彼女たちの言葉、言葉にならない思いをみつめることにしました。

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パソコンで文書を作成する久保進さん。「写真、大丈夫ですよ」。その積極性が「人には言えない」という気持ちを変えるかもしれない(高知市のサポートぴあ)
パソコンで文書を作成する久保進さん。「写真、大丈夫ですよ」。その積極性が「人には言えない」という気持ちを変えるかもしれない(高知市のサポートぴあ)
 住居スペースのような和室に並ぶ、いすと机。10人ほどがパソコンで、ビジネス文書やチラシを作っている。

 高知市桟橋通3丁目にある、精神障害者らの就労を支援している事業所「サポートぴあ」。通所して17年になる久保進さん(67)は「ここへ来る前は暴れたり、入院させられたりした」が、今は安定。薬も減り、事業所が主催するパソコン教室の講師も務める。

 「東日本大震災の後、リュックに水2リットルと貴重品などを入れて置いています」「処方箋も持ってます」「ここでも数回、避難訓練しました」

 それでも不安が消えずにある。

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 「体は動く。でも地震が起きた時、パニックを起こさないで行動できるかが不安。精神障害のある人は、ない人より心を乱しやすいですから」

 「避難生活? 制約を受けながらも『生きる』だけはできるのかなと…、いや…」

 「避難所はプライバシーがなくて、精神障害の人が調子を崩すことが多々ある。そんな時、誰かに支えてもらうには、自分の障害のことを分かってもらう必要があるんですけど、でも話せない。同じ障害の人やその家族の人とは話せますが…」

 「家のすぐ近所に民生委員さんが住んでるんですけど、日頃、病や障害の話はしないです。お互い、心にバリアーがある感じ」

 「多くの人が『私、精神障害です』って、自分から手を挙げるなんてできない。一般の事業所で就労することになり、ここから移っていった人を何人も見てきましたけど、言えてないと思いますよ」

 社会は揺れる。精神障害者の犯罪率は全体より低いのだが、そういう事件が起こるたびに「危ない人」「入院させておくべきだ」といった声が上がる。

 「いろんな人がいます。状態の不安定な人もいれば、一方で、ここに来ている人は『どこが悪いの?』って思う人がほとんど。ちゃんと話もできるし」

 「避難所で本当に困ったら? 障害のことを言えるか? それでも言えない。ボランティアの人がいても私たちの障害のこと、分かってるかどうか、って思ってしまう」

 「欧米だと『私、統合失調症です』って手を挙げられる人は多いそうです。でも、日本では…」

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 県精神保健福祉協会は2006年、南海トラフ地震対策の報告書をまとめた。それを基にはがきサイズ、全9ページのリーフレットも作成。当事者に配布した。3日分以上の薬の備蓄や処方箋の所持などとともに、こう書いてある。

 「近くの民生委員と顔見知りになって、病気を理解しておいてもらうことも大切」「仲間の支えがあると安心(中略)。普段から仲間づくりを」

 それがなかなか難しい、という人がいる。

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カテゴリー: 社会いのぐ災害・防災


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