2017.09.05 08:15

共助の地図 障害者と考える震災ハザード(1)バリアー 声を聞いて明らかに

防災について、障害のある人々の声を聞く杉野修さん(高知市内)
防災について、障害のある人々の声を聞く杉野修さん(高知市内)

 あるパネルの前からじっと動かなかった年配の女性。その小さな背中は、どこか悲しげに見えた―。と、障害者が働く菓子工房「レネー」(高知市朝倉己)を運営するNPO法人理事長、杉野修さん(59)は言う。

 今年6月。県立ふくし交流プラザ(同市朝倉戊)での「第16回高知ふくし機器展」。「おふろ」「車いす」など困りごと別に構えられたブースには「防災」もあり、人の背より少し高い7枚のパネルが置いてあった。

 そのうち2枚では、東北の障害者団体の言葉が紹介されていた。〈(東日本大震災で)避難所ができたが、いづらくて被災した家屋に帰っていった/食料もなくなった/障がい者の死亡率は健常者の2倍〉

 来場者には付箋に感想を書いてもらい、パネルに貼ってもらった。年配の女性はこうつづった。

 〈障害児を持つ親としてとても悲しく読みました。今の世 障害者は こんなみじめな生活をしなければならないのでしょうか〉

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 2011年3月11日の東日本大震災以降、高知では南海トラフ地震対策が進んでいる。が、障害者の就労を支え、次女に知的障害のある杉野さんは感じた。「その対策から、障害者は排除されていないか」

 昨年4月、レネー内に「県災害弱者支援センター」準備室を開設。障害者たちの要望を聞いた。しかし、反応の多くは…。

 日々の暮らしが大変で、防災のことまで考えが回らない人。震災が起きれば死を覚悟するしかない、それが宿命と考えている人も。

 一方で―。3回開いたワークショップでは、不安、要望が次々と出てきた。
 
 発生前の備え。「精神障害に対する偏見もあり、要配慮者名簿への登載には賛成できない面もある」

 発生時は。「視覚障害者の避難は、危険がいっぱい」

 避難先は。「重度脳性まひの息子は、呼吸器を使っていて24時間電源が必要。緊急時、どこへ行けば電源を確保できるのか」

 ワークショップで聞こえた声も交え、機器展のパネルを自作した杉野さん。

 「パネルをじっと見ていた女性も『震災発生、イコール死』なんでしょうね。でも、本当は生き延びたいと思ってるはず」

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 杉野さんは支援センター開設の準備に当たり、災害看護学が専門の高知県立大学大学院准教授、神原咲子さん(39)の協力を得てきた。神原さんもまた、障害者らの声を聞き、「災害時のケア提供における情報共有の課題」を研究中だ。

 震災時、どんなバリアーがあるのか。

 それは、どうすれば取り除けるのか。

 私たちの社会は、ともに生き延びるためのハザードマップを描けているか。

 2人の取り組みはそういったことを明らかにしつつ、支援センターの役割を明確にし、19年3月設立を目指す。

  ◇  

 「生き延びる」を意味する古い土佐の言葉を用い、本社が16年に始めた防災プロジェクト「いのぐ」。その一つとして、障害のある人や家族、支援者の「いのぐ」を考えます。

 高知県に暮らす身体、知的、精神の障害者手帳を持っている人は約5万5千人(16年度末)。私たち記者もまず、彼、彼女たちの言葉、言葉にならない思いをみつめることにしました。

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