2017.09.01 08:20

「よさこい」 五輪・パラ演舞を 日本の代表的な祭りに ネットワーク構築し発信

 1954(昭和29)年に始まった、よさこい祭り。県や高知市などによると、国内200カ所以上、世界21カ国・地域に広がり、それぞれが“進化”し続けているという。3年後に迫った2020年東京五輪・パラリンピック開閉会式などでの演舞や世界大会開催を目指し、国内外のネットワークを構築し日本の代表的な祭りとして「よさこい」をアピールしていくとする尾﨑正直知事、岡﨑誠也・高知市長、青木章泰・よさこい祭振興会長にインタビュー。その魅力とともに転機を迎えた「よさこい」のこれからについて聞いた。



尾﨑正直知事
尾﨑正直知事
尾﨑正直・高知県知事 最強のコンテンツ
 ―県は2020年の東京五輪・パラリンピック開閉会式などでの演舞、世界大会の開催などの構想を打ち出しているが、「よさこい」の魅力は?
 
 「よさこい人」として皆がつながることができる。だけど、一つの枠にはめられてしまうかというとそうではなく、それぞれが個性を発揮できる。この二つが成り立つところが「よさこい」の魅力。鳴子を持って前進する、よさこい節を入れる、それ以外は全部自由。従来の祭りの視点からすれば画期的な祭りだ。フリーであることを基本的コンセプトにしている。
 
 五輪に向け発信力を持っていきたい、その取り組みを一過性に終わらせないという観点から、おととしの秋ごろから世界ネットワークをつくろうと思い始めた。昨年からは「よさこいアンバサダー(大使)」などの制度も設け、外国において普及・促進していき、そのネットワークがよさこい世界大会へとつながればと考えている。
 
 ―それが、県が進めてきた産業振興計画など各種施策ともリンクすると。
 
 確かに、インバウンド観光を振興していこうという流れの中で「よさこい」を生かしていこうという発想があった。高知が持っている世界に通用するコンテンツを強力に発信していくというのは、インバウンドにせよ、外国向けの輸出にせよ、非常に重要なこと。「よさこい」の発信というのは強力な強みになる。このことは、ほかの「よさこい」をやっている都道府県でも言えることだと思うし、「よさこい」を通じて一つになることができれば、世界の人々の共感を得ながら知名度を上げていくことができるのではないか。
 
 またそれは、高知だけではなく全国の皆さんと一緒に取り組む方がより実現性が高くなる。「よさこい」をやっている高知以外の地方も有名になっていくことができればとも考え、「2020よさこいで応援プロジェクト実行委員会」の立ち上げを提案した。8月には北海道のYOSAKOIソーラン祭りさんや、名古屋のにっぽんど真ん中祭りさんらが加盟していただき、77団体による実行委となった。全国ネットワークとして声を上げ、オールジャパンで大同団結していく体制ができたことは非常に大きい。
 
 ―五輪・パラに向けた提案の中で「よさこい」の持つ意義は。
 
 国内で木材需要を抜本的に拡大していくという提案もしているが、世界に向けて発信していく点において高知県にとって「最強のコンテンツ」「最強の項目」だ。
 
 ―日本の代表的な祭りの一つとして「よさこい」の強みを強調しているが。
 
 日本の祭りを開閉会式等でアピールするのは極めて自然なことだと思う。ただ、明確に言いたいことは「よさこい」だけど。ある一つの祭りをPRすると、その地域だけを取り上げることになる。だが全国的なネットワークがありオールジャパンで踊っている「よさこい」なら、特定の地域に偏ることにはならないし、全国のいろいろな文化をPRすることもできるんじゃないか。そういう強みがある。また誰でも参加できる祭りでユニバーサルデザインになっている「よさこい」には、五輪・パラの選手の皆さんや観光客の方らにも参加していただける。一連の動きが全国的なムーブメントになるよう、高知市やよさこい祭振興会らと共同で取り組んでいく。その中で世界ネットワーク化ということについては、県の仕事としてやっていきたいと考えている。



岡﨑誠也市長
岡﨑誠也市長
岡﨑誠也・高知市長 風土・風景になった強み 
 ―よさこい祭りは、高知市民の祭りとしてスタートしたが。
 
 第1回の祭事は高知市議会の議事堂でやっている。今では考えられないが、商店街の振興とともに「市民の健康を守るんだ」という特異な形でスタートしたからだと思う。作曲家の故武政英策さんは「踊りは変遷していくもの」と言っていたが、いろんな踊りに変遷しても最後に戻ってくる“原点踊り”としての正調よさこいがある。そこが、高知のよさこい祭りの強みだと思う。
 
 地元にひいき筋がいて「うちの孫を出すき」とか、「子どもの頃から踊らせゆう」とか、半世紀以上にわたって地域が認めてきた祭りとしての歴史があり、一つの風土・風景になっている。風土になったものは壊されない。資金がないからやめようということにはならない。そこがイベントとの違い。
 
 ―それが全国に広がったのは。
 
 よさこい祭りは半世紀ちょっと。なのに全国津々浦々まで広がった。これは通常あり得ない。それだけ不思議な魅力があるからだと思う。鳴子を持つという絶対的な原則はあるけど、踊りは自由やし、衣装とかの縛りもないから全国に広がったんだと思う。ただ故永六輔さんは「よさこいが広がっていくのはいいが、伝統的な祭りが消えていっているのが心配」というようなことを言っていた。われわれはそんなつもりはないが、その声には耳を傾けないといけないと思う。
 
 ―五輪・パラで演舞を、という構想については。
 
 北海道から沖縄までチームがある。正確には分からないが、踊り子の数は200万人以上はいるんじゃないのかな。ネットとかで拡散すればそれ以上になるだろう。ただ、復興五輪ということで東北三大祭りなども欠かせないだろうから、日本の祭りということで開催していく形になるというのが一般的な見方。そこに「よさこい」をはめ込んでもらいたいし、その値打ちは十分あると思う。
 
 ―よさこいで応援プロジェクト実行委には全国77団体の加盟が決まったようだが。
 
 以前から各団体、チームの代表者らとはつながりがあったが、これで「よさこい」で一本につながった。連携を強化して皆で力を合わせていく。



青木泰章・よさこい祭振興会長
青木泰章・よさこい祭振興会長
青木章泰・よさこい祭振興会長 フラットな組織で英知結集
 ―今年のよさこい祭りには205チーム、1万8千人の踊り子が参加したが。
 
 今回初めて海外から欧州連合チームが参加し、国際化の第一歩となった。昨年は6カ国19人、今年は7カ国23人をよさこいアンバサダーに県が認定し、具体的な進展が図られた。
 
 ―「正調」に関心を持つチームが増える傾向にあるようだが。
 
 特に県内チームが増加しているというデータが出ている。「よさこい」の原点は正調。自由であまり制限がないからこそ原点を見つめることが大切だ。「小さい頃からよさこいに触れる機会を」という声を受け、正調踊りなどを盛り込んだDVDをつくり学校に贈っているが、そうしたことも一定の効果があったのではと思う。
 
 ―「よさこい」の魅力を。
 
 踊り、振り付け、衣装、音楽、地方車、これらが毎年、違った新しいものとしてつくられている。この自由さが「よさこい」の発展、進化につながっている。自分たちの特長を出せると同時に、個々の踊り子たちは自分を磨きアピールする。一方でチームとして統一感がある踊りをすることで、一体感や絆が醸成される。踊りの中で見られる、衣装の変化の素晴らしさ、これもほかの祭りでは見られない。そうした「表現の多様性」が人々の取り組みや情熱、熱気になっている。
 
 「自由でありたいがつながっていたい」、そんなデジタルとアナログがうまくかみ合っているような良さがある。商店街の現状には厳しい状況があるが、その存在をアピールすることはできているようには思う。「よさこい」を通じ人がつながり地域の商店街で買い物をしてくれる、そんなモデルができればと思う。
 
 ―五輪・パラに向けた対応は。
 
 日本の祭りとして評価され、認知してもらうための大きな機会になる。そのためには全国で「よさこい」に関わっている団体がより多く参加した、フラットで面的な広がりを持った組織が必要だ。
 
 「よさこい」はうちのもんだというのではなく、日本の祭りの一つとして全国に広がっていった文化だということを強みにする。振興会としてもその一助となる役割を果たしていく。英知を結集して五輪・パラの開閉会式等での演舞を実現し、全国各地で、世界各国で、踊り子の皆さんが60兆の細胞の隅々まで楽しんでもらえる、新たな次元の「よさこい」へと羽ばたいていければと考えている。
 
 


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