2017.08.24 09:05

【いのぐ記者の熊本報告1】命守るバトンつなごう

坂本文隆さんの案内で益城町を歩く4人
坂本文隆さんの案内で益城町を歩く4人
 熊本地震から1年余り。8月初旬、高知県の中学生4人が熊本県の被災地を訪れた。地面に現れた断層のずれ、むき出しの山肌、仮設住宅での生活…。テレビで見ていた風景が目の前にあった。あの時の話を聞いた。被災地の空気を肌で感じた。そして考えた。いつか故郷で起きる南海トラフ地震から生き延びるために、私たちは何をしなければいけないのか―。
 中学生の被災地派遣は高知新聞社が展開する防災プロジェクト「いのぐ」の一環で、昨年の宮城県訪問に続き2度目。今回は防災いのぐ記者4人が8月2~4日の日程で、熊本県の益城町(ましきまち)や南阿蘇村を訪問した。


熊本地震
 2016年4月14日午後9時26分ごろ、熊本県でマグニチュード(M)6.5の地震が発生、同県益城町で震度7を観測。約28時間後の16日午前1時25分ごろ、さらに強いM7.3の「本震」が起こり、同町や西原村で震度7となった。熊本県内の主な被害は次の通り。
 直接死=50人▽関連死=189人▽負傷者=2709人▽住宅被害=19万6391棟(2017年8月10日現在、熊本県調べ)


自然に向き合い備えを
 自然の大きさ、自分たちの町、備え…。いくつかのキーワードが頭に浮かび、それらがつながっていった。
 
 市立中村中3年の中屋和佳葉さん(15)は阿蘇大橋が落ちた南阿蘇村で、地元四万十市のことが頭に浮かんだ。四万十川に架かる赤鉄橋(四万十川橋)は昭和南海地震の時に落ちている。その写真を見たことがあった。
 
 阿蘇大橋のたもとは刃物で切り落とされたようにきれいな断面になっていた。立ち入り禁止の立て看板の向こうには山肌が頂上から大きくえぐられた山がある。
 
明徳義塾中の水野さん=左=と市立中村中の中屋さん
明徳義塾中の水野さん=左=と市立中村中の中屋さん
 「中村も土砂崩れが心配されようし、こうなるかもしれん。けど、どうしたらいいのか想像もつかん」
 
 中村も孤立するんだろうか。支援物資が届かなかったら。自分も故郷を離れることになるのかな。友達も減ってしまうかも…。
 
 そんな不安と恐怖心を、翌日に益城町を案内してくれた町教育委員会の坂本文隆さん(63)が和らげてくれた。「地震はどこでも起こる。危険があるなら備えをしておけばいいんです」と話してくれた。
 
 同町は断層がずれた場所を保存しようと検討しているという。「地震の威力や仕組みが見える“物差し”があれば、これからの人が防災を考える判断材料にもなるのでは」(坂本さん)との思いを知り、中屋さんはこう考えた。
 
 「自分たちの地元にもヒントはあるのかもしれない。地震の仕組みを知っていれば備えられることもあるし、対策ができれば地震は怖くなくなる」
 
巨木が根元から倒れた。4人は自然の大きな力を肌で感じた(熊本県益城町の塩井神社)
巨木が根元から倒れた。4人は自然の大きな力を肌で感じた(熊本県益城町の塩井神社)
城西中の田部さん=左=と夜須中の広内さん
城西中の田部さん=左=と夜須中の広内さん
 夜須中2年の広内琴音さん(13)は同町の塩井神社で、巨大なご神木が根こそぎなぎ倒されている光景に目を奪われた。社殿の鼻の先を通っている断層が、2度の震度7で大きくずれているのも見た。
 
 社殿の脇に湧き水が出ている所があって、手ですくうと冷たくて気持ち良かった。水は地震の後、量が増したという。断層のずれが影響したのだろう。
 
 町教委の坂本さんの説明がすーっと頭に入ってきた。広大な熊本平野も地域の湧き水や谷も、断層の影響を受けているのだと。
 
 湧き水は透き通っていて「きれいだった」。自然の大きな力を感じると同時に、「地震には怖さしかないと思っていたけど、怖いだけじゃないかもしれない」と感じた。
 
 自分が住んでいる香南市夜須町に思いを巡らせた。「きれいな海や川に囲まれた自分の町も、地震を含めた自然の恵みを受けてるんだ」。価値観がぐるりと変わり、見慣れた地元の風景が今までと違って見える気がした。

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カテゴリー: いのぐ社会2016熊本地震災害・防災


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