2017.07.30 08:25

【核ごみ地図公表】国民の理解には程遠い

 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)を地下に埋める最終処分場の適地はどこか―。経済産業省が基礎資料となる「科学的特性マップ」を公表した。
 適、不適を4色で分類した、その日本地図に驚かざるを得ない。火山や活断層などがある地域を除き、国土の7割近くが適地に位置付けられたからだ。
 高知県内も、室戸岬周辺などごく一部を除き、ほぼ全域が入った。しかも34市町村全てに「輸送面でも好ましい」最適地が含まれる。
 経産省は秋から最適地を重点に説明会を開く考えだ。選定に向けた調査への理解を自治体や住民に求めたいとしている。
 だが、現状では国民理解には程遠いのではないか。
 処分場は地下300メートルより深い場所に整備し、10万年先まで核のごみを隔離する計画だ。火山や地震が多い日本で、本当に安全が維持できるのかなど疑問は多い。
 そもそも処分場問題は、政府や、事業を担う原子力発電環境整備機構(NUMO)への不信が根深い。
 2007年、全国で初めて文献調査に応募した東洋町は町を二分する論争になり、町長の辞職、新町長の誕生を経て応募を取り下げた。
 地方の小さな町を混乱に陥れた一因は政府やNUMOの姿勢にある。住民の理解や信頼を重視せず、巨額の交付金というアメをちらつかせて過疎に悩む地域を揺さぶった。
 日本の原子力政策は疑問だらけだ。50基以上の原発を抱えながら処分場がなく、「トイレなきマンション」とまで批判されてきたが、政府や業界は先送りし続けてきた。
 核のごみは、使用済み核燃料の再処理によって生じる。再処理と再利用を進める「核燃料サイクル」事業が前提になっているが、いまだ事業は実現しておらず、事実上、破綻状態にある。
 その結果、各原発や再処理施設内には、行き場を失った使用済み核燃料計1・8万トンがたまっているありさまだ。
 福島第1原発事故によって脱原発を望む国民の声も強まっているが、政府は原子力を依然、「重要なベースロード電源」と位置付ける。原発再稼働を推し進め、廃棄物は増え続ける可能性がある。
 原子力を利用する以上、廃棄物が出る。どこかに処分場を造り、安全に保管する必要がある。子孫への私たちの責務でもあろう。
 政府もそれを強調し、マップの公表によって、処分場選定の論議を活発化させたい考えだ。
 しかし、政府や業界が過去を反省し、政策や姿勢を改めなければ、処分場問題は前進しまい。脱原発への道筋を示し、廃棄物を増やさない方向性を打ち出すことも受け入れの大前提ではないか。
 経産省は完成したマップを「処分場決定に向けた長い道のりの最初の一歩」と意気込むが、先行きは見通せない。
カテゴリー: 社説


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