2017.07.22 08:00

【伊方の停止却下】地元不安に向き合ったか

 2016年8月に再稼働した四国電力伊方原発3号機の運転を差し止めるよう愛媛県の住民らが申し立てていた仮処分について松山地裁がきのう、却下する決定をした。
 伊方を巡る仮処分の却下は3月の広島地裁に続く2例目だ。今回は地元県民による求めとして注目されたが、認めなかった。
 各地の再稼働原発でも同様の司法判断が続いている。認められればすぐに運転差し止めになる仮処分だが、ハードルの高さが顕著になってきたといえそうだ。
 原発の立地県や周辺県の住民が運転停止を求めるのは、福島第1原発事故の惨状を見れば無理もない。
 新規制基準が設けられ、「世界一厳しい基準」との見方もあるが、原子力規制委員会は「絶対安全とは言わない」とする。熊本地震では震度7を2度も記録し、「想定外」災害への懸念は増すばかりだ。
 決定で松山地裁は、新規制基準や四電が算出した耐震設計の目安となる基準地震動(想定する揺れ)も「不合理な点はない」とした。
 最近の司法判断の流れに沿う内容だが、司法は地元県民の不安にどれだけ向き合ったのだろうか。
 伊方原発は地質や地形の特殊性を殊に考慮する必要がある。国内最大級の活断層「中央構造線断層帯」に近く、直下型の巨大地震に見舞われる恐れがある。
 専門家も他の原発に比べ危険性の高さを指摘する。周辺の断層を長年研究してきた岡村真・高知大学名誉教授は四電が基準地震動を「過小評価」していると批判する。
 四電は反論し、規制委も審査で四電の基準地震動を認めたが、揺れの強さをどう見積もるかは学説によっても変わる。他の原発審査にも疑問を呈している学者がいる。
 福島第1原発事故を教訓にすれば原発事業者には最大リスクを考慮する責任があるのではないか。
 過酷事故が発生した場合の避難の困難さも争点の一つだった。伊方原発は「日本一細長い」とされる佐田岬半島の付け根に位置する。
 住民は原発の前を通って避難するか、船などで半島を離れざるを得ない。屋内退避用の放射線防御施設もあるが、土砂崩れの危険箇所が多く安全な避難に課題がある。
 松山地裁は、現時点で避難計画に問題はないとしたが、防災訓練などを通じて浮上した課題が適切に修正されない場合は「著しく合理性を欠くことになる」可能性を指摘した。言うまでもないことだ。
 そもそも再稼働を巡る避難計画の在り方は、自治体に計画策定を求めながらも審査対象から外れている。無責任な制度というしかない。
 愛媛県の住民らは即時抗告するという。広島の住民は既に即時抗告しており、大分地裁、山口地裁岩国支部でも伊方についての審理が続いている。
 原発の安全の担保は住民の安心とは程遠い状況にある。生活者視点に立った丁寧な審理を望む。

カテゴリー: 社説


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