2017.07.21 08:20

【地震新聞】高知県内の津波タワー100基に 命守る「砦」整備進む

国内最高とみられる高さ22メートルの津波避難タワー(高知県黒潮町佐賀)
国内最高とみられる高さ22メートルの津波避難タワー(高知県黒潮町佐賀)
 南海トラフ地震に備え高知県や市町村が整備している津波避難タワーが100基に達した。高知県が目標に掲げる115基に対する整備の進捗(しんちょく)率は87%。現段階で約2万5千人を収容できる計算で、津波から命を守る“砦(とりで)”が着々と整っている。

 沿岸19市町村のうち16市町村に避難タワーがある。高知県によると、最も多いのが南国市の16基で、香南市の15基、高知市の12基と続く。100基目は6月末に香南市夜須町のヤ・シィパーク内に完成した。

 避難タワーは東日本大震災以降、高知県と市町村が、近くに高台や避難ビルとして活用できる建物がない場所115カ所を選定し、整備してきた。特に高知県が2013年度に市町村を支援する交付金制度を創設したことで急速に整備が進んだ。

 形状はまちまちだが、全てが最大クラスの地震で予想される浸水深より2~4メートル高く設計されている。残り15基について高知県は、2018年度中の完成を目標にしている。

 南海トラフ地震対策で連携する「10県知事会議」の参加県のうち、避難タワーが最も多いのは静岡県の108基。これに高知県が続く。3番目の三重県は19基で、静岡県、高知県が突出している。

 高知県南海トラフ地震対策課の担当者は「普段から目に見える形でタワーがあることで、住民の『逃げる』意識の醸成にも役立つ。避難訓練を重ね地震に備えてもらいたい」と話している。


地域になじむ避難タワー

 2011年の東日本大震災を境に、高知県の海岸線の風景は様変わりした。ずらりと並ぶ津波避難タワーは100基の大台に到達。高さや形状は想定津波高や住民の要望を基に造られており、その運用もさまざま。タワーがあることで防災意識が高まっているという地域もある。タワーの周辺を歩いた。

 「形に丸みがあって重苦しくない。周りの風景に溶け込んでいるのがいいですね」。香南市夜須町の「道の駅やす」の露木理恵駅長が満足げに話す。

 道の駅があるヤ・シィパークに高知県内100基目のタワーが完成したのは6月末。14メートル余りの高さからは雄大な太平洋を一望できる。

 これまで遠足などで利用する学校から避難場所の有無を尋ねられても、パークからやや離れた場所を答えるしかなかったが、露木駅長は「タワーができたことで安心して案内できます」。

 香南市内では完成予定分を含め、高知県内で最多の24基の避難タワーが事業化されている。

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(1)白浜海水浴場に2006年に完成した「人工地盤」=左。新想定に対応する新たなタワーを追加整備した(高知県東洋町白浜)(2)ヤ・シィパーク内に整備された県内100基目の津波避難タワー(高知県香南市夜須町)(3)ヤ・シィパークのタワーから海を望む(高知県香南市夜須町)(4)中土佐町のタワー。久礼大正町市場とつなぐ接続路=左奥=も整備された(高知県中土佐町久礼)(5)東日本大震災前に計画・建設された15メートルのタワー=左。新想定に対応する19メートルのタワーが新たに整備された(高知県四万十町興津)
(1)白浜海水浴場に2006年に完成した「人工地盤」=左。新想定に対応する新たなタワーを追加整備した(高知県東洋町白浜)(2)ヤ・シィパーク内に整備された県内100基目の津波避難タワー(高知県香南市夜須町)(3)ヤ・シィパークのタワーから海を望む(高知県香南市夜須町)(4)中土佐町のタワー。久礼大正町市場とつなぐ接続路=左奥=も整備された(高知県中土佐町久礼)(5)東日本大震災前に計画・建設された15メートルのタワー=左。新想定に対応する19メートルのタワーが新たに整備された(高知県四万十町興津)
 高知県内の避難タワーの先駆け的な存在が、安芸郡東洋町の白浜海岸にある。2006年に高知県が整備し、当時は「人工地盤」と呼んでいた。

 住宅地から海の方向に逃げることになるため、当初は不安の声もあったようだが、「いろんな所にタワーができ、なじんできたね」と地元住民は話す。

 人工地盤は海面からの高さが11・5メートル。ところが、東日本大震災後に高知県が出した新想定で一帯は14・8メートル浸水するとされたため、高知県は隣に高さ約20メートルの避難タワーを新たに建設した。

 高岡郡四万十町興津でも震災前に計画されたタワー3基の高さが新想定に対応できず、これと連結する形で現在、高さ19メートルのタワーを追加整備している。

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 いたずらや転落防止のため普段は入り口を施錠、いざというときに扉を蹴破って入るようにしている自治体がある中、南国市は整備予定も含め17基全てを常時開放とする。

 南国市前浜の下田村地区の避難タワーでは、近くの住民が散歩がてらに上ったり、夏祭りに周囲のフェンスに提灯(ちょうちん)を飾ったりといった光景が見られるという。地区の自主防災会の浜田暁(さとる)さん(69)は「普段から出入りしていれば、避難場所ということを認識してもらえる」と話す。

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 幡多郡黒潮町佐賀の浜町地区に2017年春、国内で最も高いとみられる高さ22メートルの避難タワーが完成した。

 2012年3月に内閣府が出した想定で黒潮町では最大34メートルの津波高が予測されている。浜町地区も最大18メートルの浸水が予測されており、住民たちは町を挙げて取り組んでいる「犠牲者ゼロ」の思いをタワーに注ぎ込んだ。

 地区住民は各地の避難タワーを視察し、階段の一段の高さを低くすることや、車いすが通るスロープはできる限り幅を広くするよう町に要望していった。

 「想定を聞いた時はえらいこっちゃと思うたけど、タワーができた今は『津波が来ても逃げられる』という安心感が得られる」と言うのは地区自主防災会の吉本幸(みゆき)さん(81)。タワー頂上まで上るのが日課だ。

 「いつ地震が起きても逃げられるように、足腰を鍛えちょかんとね」。“おらが町のタワー”を誇らしげに見上げた。

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カテゴリー: 社会いのぐ地震新聞災害・防災


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