2017.07.17 08:55

【海の日新聞】ミナミハンドウイルカ「九ちゃん」 高知県黒潮町に居着いて3年

漁村の目の前を泳ぐ「九ちゃん」(高知県幡多郡黒潮町佐賀)
漁村の目の前を泳ぐ「九ちゃん」(高知県幡多郡黒潮町佐賀)
 1頭のイルカが、高知県幡多郡黒潮町佐賀の海に居着いて3年になる。港からすぐの、「鹿島さん」と呼ばれる無人島の近くを軽やかに泳いでいる。専門家によると、ミナミハンドウイルカという。「ああ九ちゃんね。朝昼夕とたいていおるよ」と、港町の人たち。“いつもの風景”として優しく見守っている。

腹部の黒点がミナミハンドウイルカの特徴。左胸びれに何かを引っ掛けて遊んでいるようだった(高知県幡多郡黒潮町佐賀)
腹部の黒点がミナミハンドウイルカの特徴。左胸びれに何かを引っ掛けて遊んでいるようだった(高知県幡多郡黒潮町佐賀)
 7月初旬の夕方、港の船だまりからボートを進めること数分、イルカのジャンプがすぐ見えた。「鹿島さん」と呼ばれる無人島は、漁民が安全や大漁を祈る神様の宿る場所で、西側には黄色いブイが浮いている。イルカの“住まい”はこの周辺のようだ。

 近づくと、数分ごとに「ぷすっ」という呼吸音とともに浮き上がり、またゆったりと潜っていく。

 イルカは3年ほど前、突然姿を見せたという。以来ほぼ毎日現れ、漁師さんたちにはおなじみだ。

 近くで漁家民宿を営む明神好久さん(68)は「漁師は『おるな』と思うぐらいで、てがわん(相手にしない)。けどお客さんを案内すると喜んでくれる」と笑う。

 名前は民宿客が付けた「九ちゃん」。漁民を救った人物として地域に伝わる大町九兵衛(くへい)にちなんで呼んでいる。

 種類は? 背や頭しか見えないので特定がかなり難しい。

 東京都の伊豆諸島にある御蔵島の海域で約20年、ミナミハンドウイルカを研究している小木万布(こぎかずのぶ)さんはジャンプした写真で見えた腹の模様から「ミナミハンドウのおそらくメス」と判定。少し受け口なところが御蔵島のイルカにも似ているという。

 数頭だけで特定の場所に居着く現象は他にも報告されているが、人間が追い払ったり見物客が押し寄せて姿を消したりする例もあるため「すみ着いた理由に餌も関係があるだろうが、何より人との摩擦が少ないのが大きいはず」と小木さん。

 黒潮町のNPO法人「砂浜美術館」でホエールウオッチングを担当する大迫綾美さん(23)は「『ああ、引っ越してきたんだね』という感じで人とイルカの距離が近い。すみやすい環境なんでしょうね」と喜んでいる。

 ブイの周りを泳いでいると、沖から帰る漁師たちが見やりながら通り過ぎていく。今日もイルカな?

カテゴリー: 環境・科学幡多


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