2017.06.30 08:00

【首相改憲発言】批判そらしは許されない

 安倍首相が憲法改正をせき立てる発言を連発している。
 5月の憲法記念日に合わせ「2020年の新憲法施行」「9条への自衛隊明記」などを表明したのをはじめ、秋の臨時国会に自民党改憲案を提出する意向に言及した。あまりに性急と言うほかない。
 「自民党総裁の考え」とするものの、党内には当惑や異論が噴き出している。首相の独断的な姿勢は、丁寧であるべき憲法論議をないがしろにしかねない。
 なぜ、それほどアクセルを踏み込もうとするのか。
 衆参両院の憲法審査会の議論を急がせようとの意図が指摘される。だが、審査会は国民の多様な意見をくみ上げながら、与野党が議論を重ね集約に努めていく場である。期限を切ることは全くなじまない。
 自衛隊に関しても自民党は2012年の改憲草案で「国防軍」と位置付けた。首相の自衛隊加憲論は草案との関係も曖昧なままで、トップダウンの指示に党内から反発が上がるのは当然だ。9条は、短兵急な議論で結論付けられるテーマではない。
 改憲の議論を担うのは国会だ。安倍首相は特定団体へのビデオメッセージや一部マスコミの取材などで一方的に持論を展開するばかりで、国会質疑にまともに応じようとしない。自らの発言への追及をかわそうとの意図さえ見え隠れする。
 改憲をはやる動機として挙がるのが、首相の任期だ。安倍首相は2018年9月の党総裁選で3選を目指すとされる。2018年12月までに衆院選が想定され、衆参両院で改憲勢力が3分の2以上を占めているうちに自らの政権下で国会発議に踏み切る―との算段とされる。
 菅官房長官も改憲の国民投票と国政選挙の同時実施に言及した。運動のルールも違い、混乱が予測される手法まで持ち出す前のめりの姿勢は「期限ありき」ではないか。
 だとすれば、改憲を宿願とする安倍首相の個人的願望を果たすためのスケジュール設定とみられても仕方ない。
 一連の発言のタイミングにも疑わしさがつきまとう。
 「2020年施行」などの表明は、森友学園問題の国会追及が強まっていた時期に重なる。さらに「共謀罪」法案の採決強行や加計(かけ)学園問題の疑惑が深まる中で国会を強引に閉じ、内閣支持率が急落。都議選の自民党劣勢が伝わる中、臨時国会への提案という改憲アピールを繰り出した。
 政権への批判をそらそうとしているのではないか。改憲議論を政権浮揚の具としてはならない。
 加計学園問題の真相は何ら解明されていない。国会閉会後、安倍首相は「指摘があればその都度、真摯(しんし)に説明責任を果たす」と明言した。その後に新たな文書も見つかった。野党は臨時国会召集を求めている。
 国民は改憲を決して急いでいない。安倍首相はまず、国民から突き付けられた目の前の疑問に説明を尽くさなければならない。
カテゴリー: 社説


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