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2016.05.16 07:50

奇跡の笑顔 全盲・重複障害を生きる(34)必死さが心を揺さぶる?

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2月の香南市社会福祉大会では講演終了後、22万円もの募金が寄せられた(のいちふれあいセンター)

■見知らぬ人の支援次々■
 5月初めだった。電話の向こうで山崎理恵さん(高知市)は困ったように言った。「すごいんです。どうしましょう」

 開設したばかりの郵便振替口座に募金が寄せられ始めたのだが、見ず知らずの人から10万円単位で何人も。「1桁間違えてるんじゃないかと何度も見返したんですが」と信じられない様子だった。

 NPO法人の承認は3月下旬。法務局で登記し口座を開設。4月下旬ようやく活動が始まったのだ。6月16日までの振込額は85件、194万円にもなる。2月、香南市社会福祉大会に呼ばれて講演した際のカンパでも、22万円が集まった。社会の関心は異常に高い。

 ところで、施設開設のために山崎さんは1千万円も借金する。なぜ、それほどかかるのか。ふれ愛名古屋の鈴木由夫(よしお)理事長の説明はこうだ。

 「送迎車が中古で200万円」「施設の家賃が敷金や契約後の空(から)家賃も含めて100万円」「リフォームで100万円」「福祉機器や事務用品が100万円」。さらに事業開始後、行政からの介護給付費が入るまでに約80日かかるため「その間の運転資金が200万円」。開設当初は利用者が少ないから「赤字3カ月分100万円」など。予備費も入れて最低900万円は必要。物件とリフォーム次第では1千万円を超えるという。

 これに対しての手持ち資金は高知新聞・高知放送「生命(いのち)の基金」の助成金100万円(3月授与)だけ。「あとはクラウドファンディングで何とか寄付集めを」と焦っていただけに、「本当にありがたいです。それぐらい期待してくださっているのかなと思うと気が引き締まります」と戸惑いつつも感謝感激だったのだ。

 しかし、なぜ、それほど支援があるのか。山崎さんの“応援団長”、住友カヲリさん(70)はこう話す。高知県ピアノ指導者協会の理事長で女性奉仕団体・国際ソロプチミストよさこい高知の会員。2016年5月、連載開始直後に「連絡先を教えてほしい」と電話が入り、以後、同じ香川出身ということもあって何かと相談に乗っている。連載を読んで冷や水を浴びせられたという。

 「私、20年近く『女性と女児のために』って頑張っていたはずなのに、音十愛ちゃんのことを全然知らなかったんです。毎朝、新聞を待ちかねて読んで、泣いて、申し訳なく思ってたんです。胸張って『ボランティアやってます』なんて言えないなって」

 表彰や寄付を続けてきたが、「本当の痛みが分かってなかったんですね。お金だけで済ませて、何かいいことしてるのよ、みたいな。だから、まずは知りたい。なぜ、こんなに頑張れる女性がいるんだろう。そして、経験のない世界へ一歩、踏み込みたい。そこから本当に必要な支援が見えてくる、そう思ったんです」

 本業のピアノ指導についても思う。「『うまく弾(ひ)けた、弾けない』とか『指の形が悪い』『暗譜が遅い』とか、そういうことばかり気になっていたんです。でも、ピアノを弾けるだけでも幸せなんですよね」

 確かに、山崎さんの生き方は人の心を揺さぶるほど強烈だ。いろんな人がいろんな思いで自らの人生を重ね合わせ、応援したくなったとしても不思議でなかった。

 募金は郵便振替口座「01670―1―42920」、口座名は「特定非営利活動法人 みらい予想図」。問い合わせは山崎さん(090・1326・3819)です。

高知のニュース 奇跡の笑顔

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