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2016.05.16 08:20

奇跡の笑顔 全盲・重複障害を生きる(28)苦境の中で見えた「使命」

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卒業証書をもらう音十愛ちゃん。母は感極まったという(高知市大膳町、高知県立盲学校)

■家賃滞納、電気も止まる■
 もし、ふれ愛名古屋の鈴木由夫(よしお)理事長との出会いがなければ、山崎理恵さん(50)=高知市=はどうなっていたのだろう。東京から帰った後、本人に尋ねてみた。

 「ずっと模索していたんじゃないでしょうかねえ…。この先、自分は何をして人生を終わるんだろうかと。取りあえずは子育てのために、どこかの病院に勤めていたと思うんですが」

 実は2016年夏の連載終了後、母子3人の山崎家の家計は大ピンチ。家賃を2カ月滞納、銀行残高も底を突き、ガスも電気も水道も止まるという窮地だったのだ。そんな窮地にあっても鈴木理事長の「なければ創ればいい」に反応、重症児デイサービス施設立ち上げに動いた。

 「不思議でしょ。あんな人生終わり、みたいなはずの状況下でね。それなのに、なぜだか、やれると思ってた。人生を賭けていたのかもしれません」
 
 理事長の話を直接聞き、それまでモノクロだった人生の設計図が一気にカラーとなったそうだ。

 音十愛ちゃん出産以来ずっと、生きることのつらさを感じてきた。何かしようとしても、「全盲だから」「医療的ケアが必要だから」と阻まれてきた。

 「ものすごく不便さを感じていました。医療的ケア児のお母さんは皆さん、そう思っているはずです。なぜ、地域で気楽に生活できないのって。でも、そう思ったところで、何をすればいいのか想像すらもつかなかった。探し続けることがすごく苦しかったんです」

 離婚し、仕事を本格的に始めた途端、寝込んでしまったのが2年前。その絶望的状況下でも「このままじゃ嫌だ」と思い続けていたという。出口なきトンネルの闇に光を照らしてくれたのが鈴木理事長だった。

 「あの時です。自分のミッション(使命)がはっきり見えたのは。母親が立ち上がるんだ、すごいって。勝手に納得したんです」

 ただ、資金もノウハウもない。できるはずがない。それを理事長は「お母さんなんだから大丈夫」と励まし、一石二鳥の打開策を授けてくれた。収入と研修の場を兼ねて、高知市の重症児デイサービス「幸のつどい」勤務を勧めてくれたのだ。実はそこは高知県内で唯一、鈴木理事長の主宰する全国ネットに加盟している事業所だったのだ。

 それまでは、娘と同じ職場への勤務に抵抗を感じていた山崎さんだったが、踏ん切りがついたという。何から何まで鈴木理事長でつながっていた。

   ◇    ◇

 3月15日、音十愛ちゃんは盲学校小学部の卒業式を迎えた。母は校長先生の式辞を聞きながら、目頭を押さえた。

 「感動しました。エピソードをいっぱい話してくれたでしょ。走馬灯のようによみがえってきたんです。同学年の2人のお子さんと一緒に卒業できる。みんな頑張ったなあって、感極まりましたね。音十愛なんて特に、一筋縄ではいかなかったでしょ。そこをね、本当にあの手この手で支えてくれた先生方の大変さ、苦労、全部が合わさって感謝の気持ちが涙になったんです」

高知のニュース 奇跡の笑顔

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